子供のころ、「うちは、ハンバーガーやカップ麺は絶対禁止なんだ」という友達の言葉を聞いたことがあるかもしれません。
確かにジャンクフードは健康に良い食べ物ではありませんが、それらを一切禁止する親というのも神経質すぎる気がしてしまいます。
最近、アメリカのジョージア大学(University of Georgia)公衆衛生学部に所属するアラン・テイト氏ら研究チームは、親の精神的な余裕が無くなると、子供に特定の健康食品を食べるよう圧力をかけたり、あまり健康的でない食品を過度に禁止したりする傾向が高まると報告しました。
研究の詳細は、2024年4月20日付の学術誌『Appetite』に掲載されました。
目次
- 子供に対する過度な食事指導
- 親のストレスと子供への過度な食事指導が関連している
子供に対する過度な食事指導
食事に関する家庭の方針は様々です。
それでもほとんどの人は、子供のころ「親に制限されず、もっとたくさんのお菓子やジャンクフードを食べたい」と感じたことでしょう。
一方で親たちは、子供たちに何とかして健康的な食事を与えようと奮闘してきました。
最初のうちは、「ブロッコリーを食べてみて。美味しいよ」と優しく勧めるのですが、次第にイライラして、「ブロッコリーを食べないならデザートも食べちゃだめよ!」と言うかもしれません。
このように、健康的な食事を勧めたり、健康的でない食事を制限したりすることは、一般的な家庭ではよくあることであり、子供のことを思ってなされるものです。
しかし時には、それらの指導やルールが過度に厳しくなってしまうことがあります。
例えば、「嫌いなブロッコリーを食べるまで何時間も開放しない」「ジャンクフードは一切禁止する」などといった厳しい対応をしてしまうこともあるかもしれません。
では、こうした親の厳しい食事指導の背後には、どのような要因が隠れているのでしょうか。
ジョージア大学の研究チームは、これが親の精神状態の問題と関連していると報告しているのです。
親のストレスと子供への過度な食事指導が関連している
今回、テイト氏ら研究チームは、親のストレスレベルや精神的余裕と、子供への食事指導との関連性を調査しました。
5~9歳の子供とその親(631組)を募集し、7日間にわたって、ストレスや食事の状況を調べたのです。
その結果、親がストレスを抱え、精神的な余裕が無くなって忍耐力が弱まると、その日も翌日も、親は食事に関して子供に強い圧力を加えると分かりました。
子供に特定の健康食品を食べるよう強制したり、あまり健康的ではない食品を食べないよう厳しく制限したりするというのです。
つまり、子供に対する過度な食事指導は、親の心の余裕の無さを象徴している可能性があります。
もちろんストレスだけが原因ではありません。
しかし、普段は柔軟な対応と指導ができる親でも、精神的な負荷が高まるにつれ、知らず知らずのうちに厳しい食事指導をしてしまう恐れがあるでしょう。
では、どんな親がこのような傾向に陥ることが多いのでしょうか。
研究結果によると、父親よりも母親が多いようです。
子育てを含む家庭での多くの仕事を任されている母親は、その多くの責任と労働によって日常的に疲れ果てており、このことが心の余裕を失わせます。
また、子供の数が多くて収入が低い親たちも、強い疲労感を抱えており、精神的な余裕が無い傾向が示されています。
研究チームは、親たちに積み重なる圧力を軽減するための支援が必要であることを強調しており、こうした取り組みが、子供たちに対する厳しすぎる食事指導を和らげる可能性があると指摘しています。
もしかすると、子供の頃お母さんが「うちはマックやカップ麺は絶対禁止」と言っていたという人がいるかもしれませんが、ひょっとするとその時の母親は子育てや家庭のあれこれでかなりストレスが溜まっている状態だった可能性があるかもしれません。
健康的な食事はもちろん大切ですが、食事には楽しみも重要です。「時には思いっきりジャンクフードを楽しむ」ような心の余裕があると良いのかもしれませんね。
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参考文献
Parents are overwhelmed. It may affect their kids’ relationship with food
https://news.uga.edu/parents-are-overwhelmed/?utm_medium=social&utm_content=text_link&utm_source=reddit&utm_campaign=news_release
元論文
Association between parental resource depletion and parent use of specific food parenting practices: An ecological momentary assessment study
https://doi.org/10.1016/j.appet.2024.107368
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。