「借金をなるべく早く返済することは良いこと」と信じて疑わないあなた。もしかすると、住宅ローンの繰り上げ返済の落とし穴を知らないのでは?
早く返済すれば利息を減らせるが、早く返済するよりも、そのお金を投資に回した方が良い場合もある。また、あなたが早く死んでしまうと、結果的に世帯全体でみると損をすることもある。詳しく解説しよう。
繰り上げ返済のメリットはあるが・・・
繰り上げ返済をするメリットは確かにある。利息を減らして総返済額を小さくできることが、最大のメリットだ。定年後に現金収入が減る中でローン返済の負担を減らしたい人は特に、積極的に早期返済したいだろう。
「借金を返し終わった」という達成感も、精神的なメリットと言えよう。
繰り上げ返済には落とし穴も・・・
一方、繰り上げ返済をするデメリットもある。
返済するお金で投資する方が良いケースも
1990年代は住宅ローンの金利が8%を超えることもあったが、近年は1~2%台で借りられるようになった。金利が低い場合、利息の割合が小さくなるため、早期に返済しても節約できる利息の額が相対的に少なくなる。
つまり、早期返済の恩恵も小さくなるということだ。
それなら繰り上げ返済分で資産運用をした方がいいケースもある。投資信託などで運用すれば、年間4〜5%くらいのリターンを出すことも夢ではない。それが実現できれば、結果的に返済用のお金を投資に充てた方が資産は増える。
早く死んだら損をする
住宅ローンを組む際に加入する団体信用生命保険では、住宅ローンの返済中に契約者が死亡した場合、保険金で住宅ローンを完済してくれる。
つまり、繰り上げ返済した直後に契約者が死亡した場合、本来なら保険金でまかなわれた残債分を、結果として自ら負担したことになる。
家族に残せるはずだったお金を失い、損をするリスクがある。
繰り上げ返済すべきときは?
住宅ローンを変動金利で組んでいる人は、今後の金利上昇が見込まれる場合などは、繰り上げ返済を検討するのも賢い選択だ。ただ、この記事で説明したように、繰り上げ返済にはデメリットも多い。
「借金があるのは悪」と決めつけず、メリットとデメリットを比較してどういう行動をとるのか決めよう。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。