欧州連合(EU)は、ブリュッセルに事務局、欧州議会はフランスのストラスブール、欧州裁判所はルクセンブルクと分散している。欧州中央銀行はドイツのフランクフルトでライン川沿いの仏独国境、カトリックとプロテスタントの境界に点在しているのがみそだ。

欧州議会は5年任期で、国ごとの比例代表。最低は6議席で、最大はドイツの96議席だ。

欧州議会では、極右・環境派・左派を排除して、ドイツのCDUなど保守派の「欧州人民党(EPP)」、マクロン大統領与党など中道の「欧州刷新(Renew)」、ショルツ首相のドイツ社民党の「社会・民主主義進歩連盟(S&D)」の三者連合で主導権をとっている。

フランスやドイツでは、右派と左派の対立が座標軸だ。欧州議会でも保守系会派と社民系会派が二大勢力だったが、冷戦が終わり欧州統合が進むと、それぞれの主流派がいずれも欧州統合推進派で、たいして政策の違いがなくなった。

欧州統合派のめざすのは、①欧州統合の深化と他地域との自由貿易、②NATOを重視し、ウクライナを支援し、中国へは警戒する、③移民・難民へ寛容だが、断固としたテロ対策、④財政規律の非常に強い維持とそのための年金制度の改革、⑤地球環境問題への取り組み、⑦新型コロナワクチンの半強制的な接種、⑧LGBTや中絶に見られる穏健リベラルの社会・宗教観、などが特徴的だ。

逆に言うと、極右や左派はこのような路線に懐疑的なのだ。そして、中道右派と中道左派が中道無党派層の票を狙って真ん中に拠りすぎた結果と環境問題やウクライナ問題で経済合理性を無視した政策をとったことで、右が大きく空いてしまって、極右の伸長を招いたということだ。

環境については前のめりに過ぎるし、ウクライナをEUやNATOには絶対入れないと仏独は言ってたのに、遠回しにいうものだから、ウクライナが誤解して大火事になた。

フランスのほうがドイツより極右が成功しているのは、マリーヌ・ルペンの脱悪魔路線の成功が故だ。日本の保守派よりははるかに穏健だし、経済政策もまだしもまともだ。