閣議決定のスピード感
最近の事例を紹介します。政府は、新型コロナウイルス感染症を新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象とする同法改正案を閣議決定し国会に提出しました。2020年3月11日に衆院内閣委員会で審議入りし、13日の参院本会議で成立しました。
国会審議では緊急事態宣言の発令要件や、発令後に可能とされる自粛要請などの私権についてどのように扱うか議論されましたが、スピード感のある決定でした。
これにより、首相が緊急事態宣言を発令すれば、対象とされる地域の都道府県知事は、学校、保育所、床面積1000平方メートル超の映画館、百貨店、博物館などの使用、イベント開催の制限や停止の要請が可能になりました。食料品、日用雑貨品の買い出し、必要な場合を除く外出の自粛要請もできます。
首相の権限が強まり、企業活動や個人の活動(私権)が大きく制限されます。野党の立憲民主党などは改正案に国会の事前承認を必要とする規定を盛り込むよう要求しましたが、与党は応じませんでした。
閣議決定は内閣の意思を示す重要な意思決定です。「内閣が○○について閣議決定をした」と報道があった場合、それは「法律を制定するための内閣が強い意思を表明する」と伝えていることです。
閣議決定は、国会審議を経ずに発せられる政令を決めたりできるので、非常時に迅速な対応ができる利点がありますが、逆に言えば国会のチェックが利かず、内閣の暴走を許すリスクもあります。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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