世界最古のワインが見つかったようです。

スペイン・コルドバ大学(UCO)はこのほど、古代ローマ時代の墓から2000年以上前の白ワインが見つかったと発表しました。

ワイン作りの歴史は約8000年前のコーカサス地方にまで遡るとされていますが、液体の状態で現存するワインとしてはこれが世界最古と考えられます。

しかも驚くべきは白ワインが人骨の納められた骨壷に満たされていたことでした。

なぜ古代ローマ人は骨をワインに浸すという奇妙なことをしたのでしょうか?

研究の詳細は2024年6月16日付で科学雑誌『Journal of Archaeological Science: Reports』に掲載されています。

目次

  • 謎の液体は「白ワイン」と判明!
  • 骨壷にワインを入れた理由とは?

謎の液体は「白ワイン」と判明!

研究チームは2019年に、スペイン南部アンダルシア州の都市カルモナにて、紀元前1世紀初めの古代ローマ時代の遺跡を発見していました。

ここは複数人の遺骨が埋葬された集合墓であり、幅1.73メートル、長さ3.29メートル、高さ2.41メートルの空間となっています。

両壁には8つの窪みが設けられ、そのうちの6つに遺骨を納めた骨壷が納められていました。

この集合墓はおそらく、血のつながりのある一族の墓と考えられています。

2019年に発見されていた古代ローマ時代の集合墓の遺跡
2019年に発見されていた古代ローマ時代の集合墓の遺跡 / Credit: José Rafael Ruiz Arrebola et al., Journal of Archaeological Science: Reports(2024)

しかし真に驚くべき秘密は骨壷のうちの1つに隠されていました。

それは外側の茶色い容器の中にガラス製の骨壷がすっぽりと納められている状態で、さらに骨壷の蓋を開けてみると、赤みを帯びた液体が入っていたのです。

また赤みを帯びた液体の中には男性の遺骨が浸されていました。

c:ガラス製の骨壷、d:骨壷を納めていた容器、e:骨壷に入っていた赤い液体
c:ガラス製の骨壷、d:骨壷を納めていた容器、e:骨壷に入っていた赤い液体 / Credit: José Rafael Ruiz Arrebola et al., Journal of Archaeological Science: Reports(2024)

古代ローマにおいてワインは非常に象徴的な飲み物であり、埋葬の儀式とも密接に関連していた歴史が知られています。

したがって、この謎の液体の正体もワインである可能性がありました。

そこでチームは液体の化学分析を実施。結果、すべてのワインに含まれているポリフェノールやエタノールが確認されたのです。

さらにチームは、現在のアンダルシアで醸造されているモンティーリャ・モリレス、ヘレス、サンルーカルなどのワインと比較。

するとポリフェノールでは、モンティーリャ・モリレス、ヘレス、サンルーカルのワインにも存在する7つのポリフェノール種が見つかりました、

それに加えて、液体中にはシリング酸(赤ワインに含まれるマルビジンの分解産物)が存在しなかったことから、これは赤ワインではなく、白ワインであることが判明しています。

現在の赤みを帯びた色は2000年以上の経年劣化による酸化などが原因と考えられます。

骨壷の中の液体は「白ワイン」と判明
骨壷の中の液体は「白ワイン」と判明 / Credit: canva

以上の調査から、骨壷に納めらていた液体の正体は2000年以上前の白ワインであることが明らかになりました。

チームはこの結果に驚きを隠せませんでした。

なぜなら液体として現存するワインとして、これが世界最古となるからです。

今まで世界最古とされていたのは1867年に発見され、現在はドイツのプファルツ歴史博物館に保存されている西暦325年頃のボトルワインです。

そのため今回の白ワインは、これを2000年近く更新する古さとなりました。

しかし、もう一つの大きな謎が残されています。

それは「なぜ骨壷の中にワインを入れたのか?」という問題です。