CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関である株式会社J.D. パワー ジャパン(本社:米国ミシガン州トロイ)は、現地時間3月26日に、J.D. Power 2024 U.S. Electric Vehicle Experience (EVX) Home Charging Study℠ (2024年米国EVエクスペリエンス自宅充電設備調査℠)の結果を発表した。

 電気自動車(EV)※¹ の公共充電インフラが拡大初期における数々の困難に直面しているのに対し、自宅充電はユーザーをはるかに満足させていることが分かった。ユーザーの総合満足度スコアは「ポータブル120V充電(レベル1)」、「ポータブル240V充電(レベル2)」、「スタンド・壁掛け240V充電(レベル2)」の全セグメント※2で前年から向上している。各セグメントの満足度の上昇幅は、「ポータブル120V充電(レベル1)」が+20ポイント、「スタンド・壁掛け240V充電(レベル2)」が+4ポイント、「ポータブル240V充電(レベル2)」が+2ポイントだった(1,000ポイント満点中)。

※¹ 電気自動車(EV)には、バッテリー式電気自動車(BEV)とプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)が含まれる。

2024年のスコアの概要は下記の通り:

  • 「ポータブル120V充電(レベル1)」セグメントの総合満足度は前年比+20ポイントの581ポイントだったが、「スタンド・壁掛け240V充電(レベル2)」(744ポイント)や「ポータブル240V充電(レベル2)」(735ポイント)との差は依然として大きい。EVを自宅で充電しているユーザーのうち、レベル2の充電器を使用している割合は84%だった(ポータブル240V充電とスタンド・壁掛け240V充電を合わせた数値)。

  • 「スタンド・壁掛け240V充電(レベル2)」ではTeslaが790ポイントとなり、4年連続で最も高い評価となった。


2024年調査の主なポイントは下記の通り:

「充電速度」の満足度、レベル1とレベル2で依然大きな開き
レベル1ユーザーとレベル2ユーザー間で最も満足度に差があったのは「充電速度」だった。「充電速度」の満足度は、「ポータブル120V充電(レベル1)」では325ポイント、「ポータブル240V充電(レベル2)」では649ポイント、「スタンド・壁掛け240V充電(レベル2)」では682ポイントとなった。

すべての充電セグメントでEVの不具合指摘数が増加
総合満足度が向上しているにもかかわらず、不具合指摘数は全セグメントで増加している。「ポータブル240V充電(レベル2)」の不具合指摘数は前年から6.6PP100(充電器100台当たりの不具合指摘数)増加した。最も指摘数が多かった不具合は、「インターネットまたはWi-Fiがつながらない/使いにくい」だった。また「ポータブル120V充電(レベル1)」では「通常の充電速度よりも遅い」(8.6PP100)という指摘が最も多かった。


V2H※² への期待 
電源から車両バッテリーまで一方向にのみ電力を送る多くの既存のEV充電技術とは異なり、V2Hは自宅からEVに充電するだけでなく、EVから自宅へ給電することが出来る。またEVに充電された電気を電力会社に戻すことで電気料金の削減にも貢献でき、電力消費のピーク時に、電力需要のバランスを取ることができる。
プレミアムEVユーザーの35%、マスマーケットEVユーザーの29%がV2Hに関心を持っており、追加料金を支払うことに前向きである。
※² Vehicle to Homeの略称、EVやPHEVのバッテリーに貯めている電力を自宅へ給電するシステム

電力会社のEV向け優遇プラン認知度が低い
各電力会社のEV向け優遇プランについての情報提供をEVユーザーに行うことは、自動車メーカーにとっても自宅充電設備メーカーにとってもメリットになる。充電器設置に優遇プランを利用しているレベル2の充電器のユーザーでは、「充電コスト」と「適正な小売価格」に対する満足度が、優遇プランを利用していない利用者に比べ、それぞれ+18ポイント、+15ポイントと著しく高かった。にもかかわらず、EVユーザーの約半数(49%)が、電力会社が提供している優遇プランを知らないと回答しており、18%が電力会社は優遇プランを提供していないと回答している。

J.D. パワー ジャパン 代表取締役社長 兼 オートモーティブ部門 部門長 山本浩二 のコメント
今年2月時点で、米国のEVのシェアは1割を超え、既に販売されている車両の 10 台に1台が EVとなっています。これに伴い EV充電をサポートするインフラの重要性が米国ではますます高まっています。 米国では、公共充電に課題が見られ、ステーションの設置数と信頼性の問題がEV 購入を検討している人にとって大きな障壁となっていることが分かっています。一方で本調査によると、米国のEVユーザーの8割以上が自宅に充電環境を整備しているという結果が出ています。つまり公共充電に課題がある状況でも、自宅充電を充分に活用できれば、EV購入の主な理由である利便性と所有コストの削減を強力にサポートできると考えられます。
 とはいえ、自宅充電にも課題があります。未だレベル1(120V)で充電しているEVユーザーが多く、その充電速度に不満を抱いています。
 レベル2(240V)にアップデートすると、特に充電速度に対し高い満足度が得られており、EVユーザーにとって投資する価値が高いと考えられます。また自宅充電では電力会社による様々な優遇プログラムも準備されており、自宅充電の設置工事費用の補助や夜間電力を活用した安価な電力プランの契約も可能です。しかしながら本調査ではその優遇プログラムの内容が一部のユーザーには全く届いていないことが明らかになっています。
自動車会社には、販売会社や電力会社と協力しながら、自宅充電に関する適切な情報をEVユーザーに提供し続け、彼らのEVライフがさらに魅力的になるように取り組む姿勢が求められます。それが将来の米国のEV市場の拡大の大きなドライバーになると考えます。

J.D. パワー 2024年米国電気自動車エクスペリエンス(EVX)自宅充電設備調査No.1を発表
総合満足度ランキングは下記の通り。

【スタンド・壁掛け240V充電(レベル2)】
第1位:Tesla(790ポイント)
第2位:Emporia(764ポイント)
第3位:GRIZZL-E(761ポイント)

充電速度の満足度、レベル1とレベル2で依然大きな開き【J.D. パワー 2024年米国EVエクスペリエンス(EVX)自…

※ポータブル120V充電(レベル1)、ポータルブル240V充電(レベル2)のセグメントは社内基準を満たさなかったため本年はランキング不成立。


《J.D. パワー 2024年 米国電気自動車エクスペリエンス(EVX)自宅充電調査℠概要》
年に一回、バッテリー式電気自動車(BEV)またはプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の所有者を対象に「ポ
ータブル120V充電(レベル1)」、「ポータブル240V充電(レベル2)」、「スタンド・壁掛け240V充電(レ
ベル2)」の3セグメントに分け、自宅充電体験に関する満足度や自宅充電設備ユーザーの意識や行動について
聴取している。PlugShare社の協力を得て実施し、今年で4回目となる。
■実施期間:2023年10月~2024年2月
■調査対象:2018年~2024年型車のBEVまたはPHEVのユーザー
■調査回答者数:15,617人

顧客満足度を構成する8ファクターは下記の通り:
fairness of retail price(適正な価格)、cord length(充電ケーブルの長さ)、size of charger(充電器のサイズ)、ease of winding/storing cable(ケーブルの巻きやすさ/収納しやすさ)、cost of charging(充電コスト)、charging speed(充電速度)、ease of use(使いやすさ)、reliability(信頼性)

*本報道資料は現地時間 2024年3月26日に米国で発表されたリリースを要約したものです。


*J.D. パワーが調査結果を公表する全ての調査は、J.D. パワーが第三者機関として自主企画し実施したものです。
【ご注意】本紙は報道用資料です。弊社の許可なく本資料に掲載されている情報や結果を広告や販促活動に転用することを禁じます。

PlugShareについて:
カリフォルニア州エルセグンドに本拠地を置くPlugShareは、EVインフラストラクチャについて世界で最も包括的な調査を行っている企業である。同社が開発した世界で最も人気のあるEVドライバーアプリ「PlugShare」アプリは、iOS、AndroidおよびWebに対応しており、北米では多くのドライバーが使用、また世界中で700万人以上のEVドライバーが使用している。PlugShareは、EVに関する高度なデータツール、レポート、カスタムコンサルティング、包括的な調査を自動車メーカー、公共事業会社、充電ネットワーク会社、政府、およびその他のEV業界関係者に提供している。同社は、世界最大のEVドライバー調査パネルであるPlugInsightsを有しており、現在のメンバー数は150,000人以上を誇る。

J.D. パワーについて:
米国に本社を置くJ.D. パワーは自動車に関するデータと分析の国際的なマーケティングリサーチカンパニーです。自動車業界及び一部の関連企業に、業界インテリジェンスや消費者インサイト、アドバイザリー、ソリューションを提供しています。
独自の広範なデータセットとソフトウェア機能を高度な分析および人工知能ツールと組み合わせて活用し、クライアントのビジネスパフォーマンスの最適化を支援しています。
J.D. パワーは 1968 年に設立され、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋にオフィスを構えています。