王者のプライドを見せるアズーリ

82分、イタリアは交代枠を使い切ると、最後の力を振り絞ってどうにか攻撃をしようとするが、スペインも守って受け止めてから有効な攻撃を繰り出す。

86分のイタリアの左CKでは、この試合を決定づける重要なプレーだと感じ取った両軍がヒートアップして小競り合いとなり主審が仲裁に入る。FWジャコモ・ラスパドーリ(ナポリ)の右足キックは中央で合うも、スペインのプレッシャーにシュートは力がなくGKが簡単に拾った。

90+1分にはスペインの決定的なチャンス。途中出場のFWアジョセ・ペレス(レアル・べディス)が左サイドでボールを持つと股抜きからシュート。

90+2分にはペレスが左サイドから走り込んでゴール前でスルーパスを受けるとシュートもGKがセーブ。消耗の激しい試合は、90+4分にファビアンが脚の痙攣で交代。

90+5分にイタリアはダイアゴナルボール(対角線)からシュートしCKに。最後のプレーだと悟ったイタリア主将でGKのジャンルイジ・ドンナルンマ(PSG)はゴール前に走り込むも得点はならず、試合終了。1-0の僅差でスペインが勝利。勝点6としてグループB1位で通過を決めた。

この試合で攻撃回数は16回に対して58回、シュート数は4本に対して20本とスペインが圧倒。全体としてスペインが試合を支配した。一方で最後の10分間はイタリアが攻撃でスペインを押し込むシーンもあり、前回王者の意地を見せた。

ニコ・ウィリアムズ 写真:Getty Images

勝利の立役者は左ウィンガーのウィリアムズ。得点機を量産

スペインの左ウィンガー、FWニコ・ウィリアムズ(アスレティック・ビルバオ)は、78分にペレスと交代してピッチを退くまで、切れ味の鋭いドリブル突破と際どいシュートを連発。スペインの勝利に大きく貢献した。

まだ21歳だが、181cmの身体は競り合っても簡単には弾き飛ばされない強さがある。アスレティック・ビルバオのウィリアムズというと、FWイニャキ・ウィリアムズ(30歳)もいるが、実は二人は兄弟だ。兄のイニャキはガーナ代表を選択した。


ラミン・ヤマル 写真:Getty Images

右ウィンガーのヤマルも魅せた

16分には右サイドで相手を前にしてFWラミン・ヤマル(バルセロナ)がマルセイユ・ルーレット(ドリブル技術)を魅せると会場が沸く。

24分にはヤマルが右サイドでスピードに乗ってボールを受けると、そのままドリブルで中央に向かってどんどんイタリア守備陣を突破してラストパス(ゴールエリア付近でボールを受けたモラタは得点ならず)。整った守備を類まれなスピードとテクニックで切り裂いていくヤマルの単独突破だ。後ろにスペースを作るとスピードで突破されるし、後方で守備を固めてもドリブルで粉砕される。

60分にペナルティエリアの角から左足で巻いたシュートはファーポストの左にわずかに外れ、71分にベンチに退いたヤマル。前半は際立っていたが、終盤は体力を消耗した。ユーロ2試合連続の先発で、空き時間には学校の宿題もしなければならず、疲労が蓄積しているのかもしれない。

この日もスペインの攻撃陣は右に16歳のヤマルで、左に21歳のウィリアムズ。MFペドリも21歳にして、スペインは次から次へと若いタレントが育っているということだろう。