抜群の存在感、C・ロナウドの動き

2004年大会でデビューし、ユーロ史上初の6大会目の最多参加となるロナウド。チェコとの今試合では、フル出場してセンターフォワードのような動きに徹し、ポルトガルの1得点目を誘発した他、5本のシュートを打った。

最初の大きなチャンスは32分。中盤で味方がパスを繋いでいると、何気なくセンターバックのブラインドサイドにぐるっと入る。ディフェンダーがボールを見ている方向の反対側に「消える動き」だ。そして、全くマークされない状況でディフェンスラインの裏に抜け出してシュートした。GKがセーブするも大きな決定機だった。

直後の33分には、ポストプレーでボールを受けるとヒールでラストパスを出し、アシストかというシーンもつくった。前半終了間際には、中央でボールを受けると振り向いてミドルシュートもGKが弾いた。

ロナウドがボールから遠いブラインドサイドに動くシーンは多く見られた。そして、時に引いてきてポストプレーを行う。この試合のパス精度は驚愕の100%だった。

走行距離は9.31kmで平均的な距離より少し短いが、一つ一つのプレーの精度が格段に高い。以前ほど運動量はないがサボっているわけではなく、チームとして必要なポジショニングの動きはきっちりとこなしている。

走れないのではなく、あえて走らないようにしている。体力を温存することで、重要な瞬間にプレーの精度を高めようとしているのだ。FWだから、それはもちろん得点機のためだ。ここぞという時には、短くも鋭いスプリントを行っていた。

クリスティアーノ・ロナウド 写真:Getty Images

プレーと体のコンディションまだまだ余裕

動きの質や鍛え上げたフィジカルは、走行距離を補って余りある。鍛え抜かれた身体は健在だ。体が大きな選手は動作が大味になりがちだが、ロナウドは肉体的な強さと体のコーディネーションをハイレベルで両立させている。

マンチェスター・ユナイテッドからサウジアラビアに移籍した際に、もう選手としての第一線を退いたと思ったファンもいるだろう。中東は、代表キャリアを引退した選手が行く「年金リーグ」と言われることもあるが、ロナウドには当てはまらない。

むしろ、欧州でサッカーをやり尽くして新たな挑戦をしているように映る。主要大会ユーロの試合に先発しているのに、年金生活者のわけがない。バリバリの現役である。

事実としてロナウドはサウジリーグで2023/2024シーズンに31試合出場35得点で同リーグの史上最高得点を更新した。ロナウドはサウジに移籍してからも練習の虫であり、選手として高いレベルを維持している。

39歳で代表の試合に先発している時点で驚くべきことだが、プレーと体のコンディションにまだまだ余裕を感じさせる。


ぺぺ 写真:Getty Images