ヒット作を生み出す編集者に必要な「棚感覚」
―――売れる本を作るため、編集者として必要な要素はありますか?
編集者としての「棚感覚」が重要です。棚感覚とは、作品が書店のどこのコーナーに置かれるのかをイメージする力のことです。
たとえば、芸能人が自分の趣味についてのレクチャー本を出版したとします。本当はその趣味の領域の人に読んでほしくて出したのに、芸能人の顔写真がドカンと載っている表紙を見た書店員さんが、芸能コーナーに並べてしまう場合があるんです。
このように、“どこの棚に置かれるのか”をイメージしないまま書籍を作ると、本来届けたい人に発見されず、結果売れなくなってしまう可能性が出てきます。
ほか、比較的小さな書籍が並ぶジャンルの棚に大型の本を出しても、置きづらくて書店員さんから敬遠されてしまいます。
編集者としての「棚感覚」を持ち続けることは、ヒット作を生み出す秘訣の1つといえますね。
―――『5分後に意外な結末』シリーズは、書店に新たな棚を作ったと聞きました。棚感覚とはどのようなつながりがあるのでしょうか?
前提として『5分後に意外な結末』シリーズは、児童書としての出版であったものの、中学生に読んでもらうイメージを想定して作った本です。
企画した当時は“中学生向けの児童書”というジャンルの棚はなく、完全に「棚」としてのセオリーからは外れていたんですよね。ただ、いまは「棚」がないのであれば、新しく形成されることを目指してみたいという矛盾した思いもありました。
結果的には大ヒットして、いまは中学生向けの新しい棚が出来上がっています。『5分後に意外な結末』シリーズは、棚感覚があったからこそ生まれた新しいパターンのヒット作といえますね。
後編では、ヒット作を生み出し続ける目黒さんに、編集者の将来性だけでなく、これから挑戦する若者へのアドバイスについてお聞きしました。
インタビュイープロフィール
目黒哲也(めぐろ・てつや)
株式会社Gakken マイスター/コンテンツ戦略室
神奈川県横浜市出身。1992年に学習研究社(現・学研ホールディングス)へ入社。
高校生向けの学習参考書の編集部に配属されつつも、さまざまなジャンルの書籍を手掛け、現在はコンテンツ戦略室という部署で「書籍」を制作しつつも、それだけにとらわれない商品・サービスを開発中。
代表作の『最強王図鑑』シリーズは、2024年5月時点で460万部を突破。『5分後に意外な結末』シリーズは、さまざまなランキングで「好きな本」第一位に選ばれている。