他の社員の給与水準と大きく乖離させられないなどの事情

 グリコの提示している待遇をどうみるべきか。大手SIer社員はいう。

「社内SE(PLM領域)については、大規模なプロジェクトのプロジェクトマネジメント(PM)の経験に加えて、AIも含むデータ基盤構築などのノウハウや設計フェーズの経験なども求めているようなので、求めているスキルはかなり高い。また、社内SE(SAPベーシス・インフラ担当)についても、基幹システムのPMの経験やSAPのスキルを求めており、要求スキルは高度です。大規模システムのPMをできる人材やSAPを扱えるエンジニアは一般的に年収が高い傾向があり、これらを勘案すると1000万円というのが最低ラインの目安となってくるという印象です。もちろん、現在の提示年収でも応募してくるエンジニアはいるかもしれません。勤務地が大阪市になっているので、大阪に持ち家があるエンジニアが『年収はちょっと不満だけど、自宅から通いやすし、大手メーカーだから安定していて福利厚生もよいだろう』と考えて応募してくるといったケースも考えられます」

 グリコが低めと考えられる年収で募集をかけている理由は何か。

「社内の前例や給与に関する規則による制約、もしくは他の社員の給与水準と大きく乖離させられないなどの事情で、高度なスキルを持つITエンジニアの募集において業界的に適正な金額を提示できないというケースはよくあります。こうした制約を回避するため、システム開発の別会社をつくって高額な報酬を用意してエンジニアを採用する企業も少なくありません。もしくは、単に経営陣がエンジニアの給与相場をよくわかっていなかったり、そもそもシステム開発というものに対する重要性の理解が欠けているという可能性もあるかもしれません」(同)