「シンプルで楽しい」をキーワードに開発
2005年にトヨタとスバルが提携。それ以降、2社によるさまざまなプロジェクトが生まれた。いちばんの功績は、やはり2012年に登場した初代トヨタ86/スバルBRZだろう。これはトヨタが企画/デザイン、スバルが開発/生産を担当。2社で1台を開発した、世界でも極めて珍しいコラボレーションだ。
86/BRZは「スポーツカー三種の神器」である過給機/4WD/ハイグリップタイヤをあえて使わず、「ドライバー中心」、「コントロールしやすい操縦性」、「頑張れば手が届く」のコンセプトを掲げ、 新時代の「シンプルで楽しい」FRライトウェイトスポーツとして開発された。
提携しているとはいえ、トヨタとスバルは独立メーカーである。企業文化も開発手法も異なるため、共同開発は何度もご破算の危機があったという。それを救ったのはさまざまな「化学反応」だった。たとえば、当初はFRに難色を示していたスバルが試作車を作り上げるとその面白さに目覚めたり、高回転型の環境に優しいエンジン実現のためにトヨタが当時マル秘だった「D-4S技術」を惜しげもなく開示した件など、それだけで本1冊が書けてしまうくらいエピソードがある。中でも当初は1スペックで開発。最後の最後に「各々のセットアップ」に変更された話は、クルマ好きに「味づくり」の重要性を問うキッカケとなった。
初期モデルの乗り味は、「FRらしさ」を目指したトヨタ86、「FRでもAWDと変わらない安心・安全」を目指したスバルBRZだった。その後、モデルライフ中の改良で走りのテイストが近づいたのは、お互いをリスペクトしていた証かもしれない。
86/BRZは、PRやマーケティングも常識破りだった。とくに86はトヨタ・ブランドのスポーツカーとして5年ぶりの復活という事情もあり、正式発表前にレース参戦(ニュル耐久選手権)やチューニングメーカーへの情報開示、さらには異業種とのコラボやCMに頼らないアピールなど、新しい挑戦が行われた。
その成果については、説明不要だろう。世界各国で老若男女問わず多くのユーザーが生まれた。そのうえ、元気がなかったカスタマイズメーカーが活性化、モータースポーツも盛り上がりを見せる。
いま、初代に乗ると左脳ではエンジンもシャシーも「ちょっと足りない」という評価になる。だが右脳では「足りない部分はドライバーが補えばOK」と思う。個人的には「クルマと人がシンクロしながら走らせる」という意味で、最新型より「味わい深い」と思っている。
トヨタ86主要諸元
モデル=2012年式トヨタ86・GTリミテッド(MT)
新車時価格=6MT 297万円
全長×全幅×全高=4240×1775×1300mm
ホイールベース=2570mm
トレッド=フロント:1520/リア:1540mm
車重=1230kg
エンジン(プレミアム仕様)=1998cc水平対向4DOHC16V
最高出力=147kW(200ps)/7000rpm
最大トルク=205Nm(20.9kgm)/6400~6600rpm
JC08モード燃費=12.4㎞/ℓ(燃料タンク容量50ℓ)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=215/45R17+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=4名
提供元・CAR and DRIVER
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