ヴァレンティノ・ロッシは相変わらずの大人気!
桜があっという間に散ったかと思ったら、ヨーロッパにもモータースポーツシーズンが続々と開幕し、慌ただしくもあり、活気のある日々が戻ってきました。4月ももう終わろうかとしているこの日、私はWEC(世界耐久選手権)のイモラ戦の取材のためにイタリアへとクルマを走らせました。
4月後半のイタリアは通常ならば夏日のような陽気で新緑が眩しい季節です。ドイツの自宅を出る際には寒の戻りでかなり寒かったのですが、南下する内にイタリアの陽気になるに違いない、そう期待していて半袖のポロシャツをバッグに詰めました。
ドイツからイタリアへ行くルートはいくつかあるのですが、一番代表的なのがブレンナー峠を通ってのコースです。ドイツは高速道路の料金が無料なのですが、オーストリアは10日、二ヶ月、半年、一年用の各種ステッカータイプの高速料金が必要となります。(一部のガソリンスタンドでは、ナンバーの電子入力での購入可能)。更にはこのオーストリアとイタリアのブレンナー峠を通過するのには別途通行料(片道11ユーロ)が必要になります。
イタリア国内は日本と同じようにインターチェンジがあり、高速料金が必要となるので、ドイツからイタリアへ行くとなると結構高くつくのが痛い出費です。このルートが楽しいのならまだ良いのですが、ドライブしていてつまらないので、私はよっぽど急いでいる時以外はこのブレンナー峠ルートを利用せず、アルプスの山を越えて行きます。
この日は事前に下調べをしていたルートでイタリアのアルプスを走りまくって、イモラの宿へ到着するハズでしたがあいにくの雨で、アルプスドライブは残念ながら諦めてサーキットへ直行する事にしました。ミュンヘンを出た時点から十分寒かったのですが、自宅から30分程アウトバーンを走ると脇道に雪が積もっていてビックリ。更にはオーストリアに入ると吹雪になって、やや不安になってきました。
かなり慎重に吹雪の中を走り抜け、ブレンナー峠も雪が降り、ヴェローナに入ると雷を伴う豪雨……。つまらないルートの高速道路ですが、とてもバラエティに富んだお天気で、いつもより神経を使った事もあり、ぐったりしてサーキットに到着しました。
今季のWECのヨーロッパラウンドの幕開けはイタリア。イモラはフェラーリのファクトリーがありマラネロから約90km、そしてランボルギーニのあるボローニァ郊外までは約78kmと、両メーカーにとってはホームレースとなり気合が入っています。
またMotoGPの大スター、ヴァレンティノ・ロッシはイタリア人。故郷であり、ロッシが居住するタヴリア村からは約110kmとあり、ロッシファンとフェラーリファンがイモラのサーキットへ大勢詰め掛けました。ランボルギーニファンももちろんいましたが、やはりフェラリスタとロッシファンの数には敵いません。
トヨタ、ポルシェ、キャディラック、フェラーリ、プジョーに加え、今年はアルピーヌ、ランボルギーニ、BMW、イソッタ・フラスキーニが加入してフィールドが非常に拡大したハイパーカークラス。トップドライバーと数多くのブランドが集うこのクラスの戦いは大迫力の熱戦が繰り広げられています。トヨタには小林可夢偉と平川亮の両選手、そしてLMGT3クラスへはマクラーレンの720S Evoで佐藤万璃音選手、レクサスRC-Fには木村武史選手が出場し、合計4名の日本人がこの世界選手権でシリーズ参戦しています。
LMGT3クラスは今季から新設されたFIA GT3マシンを投入してのクラスで、プロとアマチュアレーシングドライバーがタッグを組みます。プロはアマチュアドライバーをうまくサポートし、よりよいポテンシャルが発揮できるような環境作りも大切になってきますので、団結力も大切な要素となります。このクラスにはヴァレンティ―ノ・ロッシも参戦しているのですが、MotoGPの引退後は四輪へ転向して精力的に活動をしています。カテゴリーは変わっても応援し続けてくれるファンが大勢いるのは素晴らしい事ですね。
さて、今回はair b and bで予約をしたイモラ市内の一般のイタリア人マダムのご自宅へ宿泊させて頂きました。住宅街の一角で治安も悪くなさそうです。しかし、2日目の夜中にクルマのアラーム音がけたたましく鳴り響き、一瞬で目が覚めるという事態に。鳴りやんだかな? と思ったら、二度目、三度目と続き、これはただ事ではないと思い、愛車を停めている場所まで走りました。暗がりの中で何度もチェックしてみましたが、ガラスを割られた形跡もなく、盗難被害にも遭ってなくてホっとしました。以前にモンツァのサーキットの駐車場で、レーシングドライバーやチーム関係者のクルマが連続して車上荒らしにあった事もあり、イタリアではいつもちょっとドキドキしてしまいます。宿のマダムによると「イモラの治安は悪くないし、地元の人はそんな悪い事はしないわよ」との事でしたが……。
フリープラクティスを経て、ドキドキの予選。地元応援パワーもあり、ハイパーカークラスはポールポジションから三番手まで全てフェラーリが独占するという大ミラクルでした。LMGT3クラスはニュル近郊にファクトリーを置く名門マンタイレーシングのポルシェ GT3 Rでした。ちなみに、LMGT3クラスの予選アタックの大役はジェントルマンドライバーが努めますので、プロドライバーは彼らのアタックをじっとピットで見守っています。
日曜日の決勝日は朝から快晴! 数多くのファンが早朝からサーキットに詰め掛けて楽しそうです。お目当てのチームや選手のTシャツやグッズを身に着けての応援スタイルはちょっと憧れです(笑)。仕事上、ニュートラルな服装を心掛けないといけないので、いつかプライベートでレース観戦をする機会には、みなさんのようにファングッズで身を固めてみたいのです。スタート前のピットウォークでは、とてもステキな美しいマダムたちに遭遇。思わずお声掛けをして写真を撮らせて頂きました。ピットウォークはレースウィーク中に二度開催されたのですが、フェラーリとロッシはもちろんの事、Jotaレーシングのポルシェ963を駆るジェンソン・バトンとアルピーヌのミック・シューマッハも特別に人気がありました。
スタートグリッドでは地元の伝統的な音楽と踊りをささっと見学して、アウトサイドの1コーナー手前までダッシュで移動。スタートシーンを撮るべくカメラを構えて待機しました。いよいよスタート! トップ3台をフェラーリが占めた事もあり、そのスタートの画はまるで映画の1シーンのようでした。
私が丁度撮影していた所からは全く分からなかったのですが、そのすぐ後ろの1コーナーでBMW、プジョー、アルピーヌ、イソッタ・フランキーニがスタート直後に多重クラッシュ。すぐにセーフティカーが導入!
レース序盤はコースサイドを歩き、メディアセンターへ戻る前にそのままグランドスタンド裏側のイベント広場に行ってみました。ショップやクルマの展示の他、DJがノリノリでレースを盛り上げる中で、ダンスに興じるファンも楽しそうでした。フードコーナーは地元イタリア産の食材を使ったグリルサンドやポテトチップスがめちゃくちゃおいしそうでしたが、お金を持っていなかったのが残念でした。
あれだけよいお天気だったのに、レース中後半からは空が黒くなり始めました。急いで雨雲レーダーをチェックすると17時前には雨が降る!? フェラーリ同士で猛烈なトップ争いをしていたのが、トヨタがいつの間にか追いつきオーバーテイクに成功。順調にポジションを上げていたBMWはどこへ……?
さて雨でどんなにまたシャッフルするでしょう。私は最後の二時間をピットロードへ向かい、強い雨と風に打たれながらその様子を観察していました。レインタイヤに交換するタイミング、セーフティカーが入ったタイミング等、様々な戦略が最後の勝負を決めたのでしょうか、小林可夢偉選手がトップに躍り出て、ポルシェに終始ぴったりと追撃されながら燃料の残量にハラハラしながら見事逃げ切り、小林選手ら7号車のトヨタGAZOOレーシングが今季初の勝利を挙げました。
残念ながらフェラーリの表彰台は叶いませんでしたが、ライバルのフェラリスタ達が多く表彰式に駆け付けてトヨタの優勝を称えていてくれましたし、LMGT3クラスの表彰式では、もちろん『ヴァーレ!ヴァーレ!ヴァーレ!』とロッシの地元イタリアでのポディウムに何よりも沸いていました。ロッシの家族や友人も多く応援に駆けつけており、とても良いレース、とても表彰式だったと思います。
せっかくイタリアまで来たのに、レース翌日も雨! 気温がとても低く、どしゃぶりという最悪のお天気です。イタリアでは青空市場がとても楽しくて、毎回色々な街で寄るのを楽しみにしていますが、残念ながらこれも却下。しかし、なんとかマラネロのフェラーリミュージアムには寄ろうと決めていたのでそこだけは向かいましが、月曜日なので空いているかと思い気や、駐車場がいっぱいで何度もグルグル回るハメに。ミュージアムの目の前の駐車場なのに、僅か数メートルを歩くだけで、一瞬でずぶ濡れで傘は役立たず。ここは何度も訪れている事もあり、足早に観て岐路につきました。
どしゃぶりの雨という事で、帰りもアルプスの峠経由は諦めて退屈なルートでミュンヘンへ戻る事になったのですが、やはり行きと同様に雨から雪に変わりビックリしました。行きよりも更に気温は下がり−2℃!道路に雪が積もっている場面にも遭遇し、夜遅く後続車もいなかったために自主的に超ノロノロ運転で帰りました。なんだかとっても消化不良のイタリア。果たして今年はまた行けるのかしら?
文・池ノ内 ミドリ/提供元・CARSMEET WEB
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