先ず、6月9日に実施された欧州議会選挙(定数720、任期5年)のドイツでの結果を振り返ってみる。第1位は野党「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)で得票率約30%、極右政党「ドイツのために選択肢」(AfD)が15.9%で2位、ショルツ首相の与党「社会民主党」(SPD)が13.9%で3位、「緑の党」が11.9%、そして左翼党から分かれた左派ポピュリスト政党「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟」(BSW)6.2%、自由民主党(FDP)5.2%と続く。
この結果(暫定)から、CDU/CSUが断トツに強かった一方、ショルツ首相が率いる3連立政権、SPD、「緑の党」、そしてFDPはいずれも得票率が減少したことが分かる。特に、ドイツの脱原発路線(昨年4月15日を期して脱原発時代は始まった)、再生エネルギーへの転換などを推進してきた「緑の党」は前回(2019年)比で大幅に得票率を失い、獲得した議席は12議席(マイナス9議席)に留まった。「緑の党」のベアボック外相はロシアのウクライナ侵攻を厳しく批判し、キーウ政府を積極的に支援してきたが、その外交ポイントは今回の欧州議会選では反映されずに終わった。
ただし、ドイツの「緑の党」だけではない。隣国のオーストリアでも「緑の党」は得票率、議席数で減少している。党筆頭候補者の不祥事もあったが、環境保護政党の「緑の党」への批判が高まっている。ロシア産天然ガスの輸入に依存してきた欧州諸国、その中でも70%以上がロシア産エネルギーに依存してきたドイツの産業界は脱原発、再生可能なエネルギーへの転換を強いられるなど大きな試練に直面してきた。ショルツ政権が推進するグリーン政策に伴うコストアップと競争力の低下は無視できない。「緑の党」は国内の産業界からはエネルギーコストの高騰、メイド・イン・ジャーマニー製品の競争力の低下をもたらした主犯者と受け取られ、欧州議会選で懲罰を受けた、といった感じかもしれない。
欧州議会選でショルツ連立政権の3党が獲得した得票率は約31%だ。CDU/CSU1党の30%とほとんど変わらない。選挙結果が判明した直後、CDUのメルツ党首は「ショルツ政権がドイツ国民の支持を得ていないことが改めて明らかになった」と表明、CSUのゼーダー党首(バイエルン州首相)は「国民の30%の支持しかないショルツ連立政権は早期退陣し、総選挙を実施すべきだ」と主張している。