伝統的な手作業の味わいを残しつつ、現行品の実用性を備えた1970年代から90年代のポストヴィンテージウオッチ。90年代には機械式時計復興を牽引したアイコニックなモデルが各社から排出されているが、そのなかでも時計好きから高い支持を得ているのが、現行モデルとは趣の異なる質実剛健なデザインで知られるIWCのGSTシリーズだ。
GSTシリーズデザインがいかに魅力的か、97年に発表されたファーストモデル、GSTクロノグラフを見てもらえればわかりやすい。
クロノグラフのためケースは約14㎜の厚さを備えているが、ケースに工夫を凝らし、装着感抜群のスリムなブレスレットを違和感なく装備。厚めのケースにはバランスを整えるために同じく厚めのブレスレットを合わせるのが普通だが、ブレスレットに合わせてラグの先端を薄く成形し、ケースとブレスレットに一体感を持たせ、バランスを整えているのだ。
IWC(アイ・ダブリュー・シー)
GSTクロノ・オートマティック
クロノグラフの王道を行くGSTシリーズのファーストコレクション。マットなシルバー文字盤にアップライトのゴールドインデックス、時分針を採用した機能的かつ高級感のある文字盤に加え、ラグからブレスレットにかけて一体感を持たせたエルゴノミックなデザインが特徴。ブレスレットは独自設計を採用し、付属の工具を使うことで簡単にコマの調整が可能。美観のみならず実用性に優れた構造も特徴だ。薄めのブレスレットは手首にフィットしやすく、快適な装着感を誇る。
分厚いケースと薄型のブレスレットを違和感なく組み合わせるために生み出されたのが、ケースと一体成形された独特のラグデザイン。ブレスレットに向けて先端を細く絞り込んでいるため、ケースが目立ちすぎないように薄型ブレスレットを設置することができる。
GSTシリーズからはGSTクロノオートマティックのほか、クォーツ仕様のGSTクロノ、GSTオートマティックアラーム、2000m防水を誇るGSTアクアタイマー、機械式水深計を備えたGSTディープワン、GSTクロノラトラパンテ、GSTパーペチュアルカレンダーと多彩なコレクションを展開しているが、いずれのモデルもデザインバランスが非常に高いのが大きな魅力といえるだろう。
こうしたGSTシリーズ独特のデザインのベースになったと言われているのが、70年代から80年代に一時代を築いた“ポルシェデザインby IWC”だ。フェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェが設立したポルシェデザインがデザインを手掛け、IWCがチタンケースなどの製作を請け負って作られた“ポルシェデザインby IWC”は、人間工学的な観点をデザインに取り入れた独自のデザインを構築。代表作のひとつである、チタニウムクロノグラフには、腕に吸い付くようにフィットする独自設計の薄型ブレスレット、ケースとブレスレットに一体感を持たせたフォルム、バーインデックスと目盛りで構成された機能的な文字盤など、GSTシリーズのエルゴノミックデザインと多くの共通点を確認することができる。
ムーヴメントに関してはETA社のCal・7750をベースにIWCが独自にモディファイを施したCal・7922を搭載。Cal・7750で採用しているエタクロンよりも安定性の高いトリオビス緩急針を採用するなど、自社で高級機仕様の改良を加えている。まさにデザインと機能を両立した名作だ。
【コレクター心をくすぐる派生モデルも要チェック】
GSTパーペチュアルカレンダークロノグラフ
1985年発表の名作ダ・ヴィンチクロノグラフと同じCal.79261を搭載したコンプリケーションモデル。GSTパーペチュアルカレンダークロノグラフの開発にあたり、カレンダー機構の耐衝撃性を高める改良が加えられ、より実用性が高められた。また、GSTでは頑強なケースを採用しているためドレスウオッチであったダ・ヴィンチよりも1.7mm厚く、サイズも4mmサイズアップ。文字盤のデザインはバランス良好で堅牢性も高いのだが、大振りな印象なのは否めない。好みの分かれるところだ。
GSTクロノグラフ ラトラパンテ
2本のクロノグラフ針でラップタイム計測を行えるスプリットセコンドクロノグラフ。通常、複雑機構モデルはデリケートな扱いが必要となるが、このモデルでは頑強で機密性の高いケースで12気圧防水を実現。ムーヴメントもETA社のCal.7750に独自開発したスプリットセコンドモジュールを加え、細部まで徹底した改良を加えることで安定性が強化されている。デイリーで使用できるスポーツウオッチに、機械式時計の醍醐味を味わえる複雑機構を組み合わせたGSTシリーズの集大成といえるだろう。
文◎Watch LIFE NEWS編集部
提供元・Watch LIFE NEWS
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