ACEA(欧州自動車工業会)は4月、EUエリアにおける電気自動車用の充電拠点の充実を急ぐ必要があると発表した。 ACEAによれば、EUのBEV販売は2017年から2023年にかけて急速に成長しているが、その成長速度は充電拠点の設置速度を3倍も早いという。つまり、BEVの普及拡大に対し、充電拠点の設置が追いついていない状況を憂慮しているのである。
そもそも、EU域内における充電拠点の61%はオランダ(14万4453)、ドイツ(12万625)、フランス(19万255)の3カ国に集中している。ドイツとフランスはBEVの販売台数が多いし、オランダもBEVの販売比率が約35%(2023年3月、新車販売台数は約3万7000台)と高い水準にある。
BEVの販売比率が約90%を占めるノルウェーの充電拠点は、ノルウェイの公式旅行ガイドサイト「Visit Norway」によれば、2023年時点で公共の充電拠点が3463個所、急速充電拠点7753個所と紹介されている。ここで紹介されているBEVの保有台数は約69万台で、充電設備に関しては「充電拠点は国内の至る所にある。もう走行距離の心配対して、さよならをいおう」とまとめている。
ノルウェーやフィンランド、などの寒い地域ではエンジンの凍結を防止するためのブロックヒーターが普及し、これに電気を供給するためのコンセントが駐車場に用意されいている。ノルウェーでBEVが普及する背景には、こうした事情もあるだろう。すでにあるコンセントが、BEVに使えるのだから。
それでも充電渋滞は発生し、政府はこの問題を解消するために充電拠点の拡充や充電器の利用状況のリアルタイムサービスなどを進め、対策を図っている。また、マイカーから公共交通機関に切り替えても不便にならないようにも配慮している。
ACEAのデータにれば、2023年の1年間で公共の充電拠点はEU域内において15万拠点以上が新規に開設し、総数は63万拠点を超えた。毎週3000拠点が増えた計算である。
これだけの勢いで増やしても、EUは「2030年までには350万拠点の充電拠点が必要になる」と発表している。毎年41万拠点、毎週にして8000拠点を増やす計算だ。
ところが、ACEAの予測はEUの見立てとは異なる。ACEAによれば、「2030年に必用になる充電拠点は880万個所。毎年120万拠点増やす必要がある」というのだ。毎週2万2000拠点増やす計算で、2023年実績の実に8倍というスケールである。
加えていえば、充電拠点が増えればメンテナンスやトラブルに対応する回数も増えるはずだ。老朽化した設備の入れ替え作業もあるだろう。また、人々が利用しやすい土地・場所を充電拠点用に確保する必要もある。全個体電池が実用化して、1台当たりの充電時間が5分程度に短縮できるのは、まだ先の話だろう。それまでは、充電渋滞が発生しない場所を確保し続ける必要がある。
「公共の充電拠点が簡単に利用できるようになる状態は、決して理想ではない。道路交通においてカーボンの排出量を減らすために必要不可欠な設備なのである。もちろん、ユーザー側の支援も必要だし、メーカー間の競争も必要だ」とACEAは指摘している。
必要な充電拠点と、拠点開発の間には大きな隔たりがある。その現実をACEAは指摘したうえで、「目標温度達成」のためには避けて通れないことを明らかにしたのである。
BEVの供給体制は、欧州メーカーを中心に急速に整いつつある。充電拠点が脆弱で使い勝手が悪いとなれば、ユーザーはHEVやPHEVの利便性に改めて注目する可能性が出てくるだろう
BEVの量産を進める一方で、充電拠点の開発速度も同様に高める必要があることを、今後BEVが進展するマーケットのユーザーは覚えておいたほうがよさそうだ。
提供元・CAR and DRIVER
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