1960年代にギリシャの都市アルゴスのデンドラ村にて、約3500年前の鎧が発見されました。
アルゴスはかつて古代ギリシャ以前に栄えた「ミケーネ文明」があった場所です。
そして約3500年前(紀元前15世紀)のミケーネ文明は、あの伝説的な詩人ホメロスが書き残した「トロイア戦争」が起きたとされる時代に付合します。
つまり、デンドラ村の鎧はトロイア戦争で使われたものと同様の型であると考えられるのです。
しかし鎧の発見以来、それが単なる装飾用のものなのか、実際の戦闘に適したものなのか、答えが出ていませんでした。
そこでギリシャ・テッサリア大学(University of Thessaly)は今回、デンドラ村の鎧のレプリカをギリシャの海兵隊に着せて、トロイア戦争を模した本格的な戦闘シミュレーションを実施。
その結果、1日11時間の戦闘にも十分に耐えられるほどの実用性があることが確かめられました。
研究の詳細は2024年5月22日付で学術誌『PLOS ONE』に掲載されています。
約3500年前の「古代ミケーネの鎧」を完全再現!
今回の調査対象となった「デンドラ村の鎧」は驚くほど良好な状態で発見されました。
全体がほぼ完全に残されていたのみならず、短剣や、鎧を装着していたであろう人物の遺骨なども同じ場所にまとめて埋葬されていたのです。
そのおかげで研究チームは鎧や武具のレプリカを極めて忠実に再現することができました。
レプリカ製作には実際の遺物だけでなく、歴史的な資料も活用し、鎧を構成する青銅の板や鎧を体に固定する革製のひも、寸法から細かいミシン目に至るまで正確に再現しています。
短剣は刃の部分を銅で、柄の部分を栗の木で作りました。
鎧や武具の総重量は全部で約23キロとなっています。
そしてチームは鎧の実用性を検証すべく、現役で活躍するギリシャの海兵隊に協力を依頼し、鎧を装着した状態で戦闘シミュレーションを実施しました。
戦闘シミュレーションの参考にしたのは、あの伝説的な戦いである「トロイア戦争」です。
では、その戦闘実験の詳しい模様を見てみましょう。