時間はたくさんある一方、バーンアウト(燃え尽き症候群)に苦しみ、思うように活動できなかった私を救ってくれたのは世界的ベストセラー作家のアラン・コーエンのコーチングだった。しかし影の立役者はゲームだったことは間違いない。夢中になっている間はネガティヴな思考に苛まれずにすみ、子供達とも楽しい時間を過ごすことができたからだ。

ドラゴンクエストⅪにハマるきっかけをくれたのは、定期的に会う親友達だった。ある日の会でドラゴンクエストⅪの話題になり、クリアするのになんと100時間近くかかるという。

当時ゲームをすでに再開していた私だが、100時間もゲームに費やすことには抵抗があった。そう率直に伝えると「何を言ってるんだ。1作で100時間も遊べるんだぞ」と真剣な顔で語られたのだ。なぜかこの一言が決め手となり、そこから私は100時間プレイすることになるわけだが、まさに至福の時間だった! 次回作を買うことも間違いない。

身体は本能的に休息・リラックスを求める

多くの自己啓発本にはゲームやマンガ、インターネットなどに意味なく時間を費やすのでなく「やりたいこと」をやろう。そんなメッセージが溢れている。素直な私はこれを実践してきた。

たとえば私にとって執筆や講演などは間違いなく「やりたいこと」に入る。もちろん取り組んでいるときは、至福の時間だ。しかしそればかりしていると、さすがに疲れて心も渇いていってしまう。

私が経験から学んだこと。それは至福の時間は多岐にわたり、バランスよくそれらに時間を使うことが大切だということ。少なくとも私にとってゲームは、渇いた心を満たしてくれる存在で必要な時間なのだ。

友人の一人に忙しい税理士がいる。彼は仕事の合間に気づくとSNSを見続けてしまうことがあるという。もちろん1日中ずーっと見ているわけではないし、仕事もしっかりこなしている。私から言わせれば、彼の身体は本能的に休息、リラックスを求めているのだろう。だから身体がそれに従っている。ただそれだけの話なのだ。

無駄を楽しむ-心の渇きと時間泥棒

無駄な時間を排除して忙しく生活していると、そのうちに身体と心が悲鳴をあげて結果的に望まないことに時間を費やすことになりかねない。人間には仕事や辛い現実を忘れさせてくれる「非日常」の時間が必要なのだ。

だからこそ、ディズニーの世界があれだけ人気があるのではないだろうか。人によってはそれが旅だったり、推し活だったり、ネットフリックスを見ることだったりする。製造の世界において「遊び」という余裕部分を意図的に設けることがあるように、人間にも同じく心に余裕が必要だ。忙しいとは心を亡くすと書くのだから。

意識的に「無駄だけど至福なこと」に時間を使おう。ゲームばかりしていたら自分がダメ人間になるように思えるかもしれない。しかし意外かもしれないが、無駄なことばかりしていると今度は逆に生産的なことをしたくなるものだ。無駄を排除し続けていると無駄を求めるようになるわけだが、逆もしかり。私達の身体は本能的にバランスを保つようにできている。

私だって自由時間全てをゲームに費やしたりはしない。読書をしたり、YouTubeで海外の作家の話を聞いたり、家族と話をしたり。そんな感じで自分の中でバランスよく毎日を過ごすことができている。

もちろん、これは試行錯誤の末たどり着いた境地だ。バランスは必ず見つかる。君も自分にとっての最適なバランスをぜひ探り当ててほしい。

滝川 徹(タスク管理の専門家) 1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年5月27日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。