かつて、昭和の経済成長期においては、産業界の資金需要が旺盛なのに比して、国民貯蓄の形成は十分ではなく、相対的に資金供給能力が不足していたので、産業政策として、資金確保を図るために、金融市場は高度に規制されていたのだが、資産形成の面では、金利が高かったので、それで特に不都合もなかったのである。
その後、経済の成熟に伴って事情は逆転し、現在では、産業界の資金需要に対して国民貯蓄は圧倒的に過剰になっていて、それが超低金利の超長期間にわたる定着に現れているわけである。故に、金融行政の重要な課題として、貯蓄構造の改革を国民の安定的な資産形成として結実させ、資産効果から生じる消費需要をもって経済の持続的な成長を実現させることが目指されるのである。