白人41.8%、黒人27.6%、アジア人59.3%、ヒスパニック系20.9%───これはアメリカにおいて、25歳以上で学士号以上を取得している人の割合だ(参考)。
Boston Consulting Groupによると、企業の経営陣の多様性とイノベーションとの間には強い相関関係があるという。同社が8か国・1700以上の企業を対象に、性別、年齢、出身国、経歴、学歴などの側面から“多様性の認識”を調査した結果、経営陣の多様性が平均以上であると報告した企業は、平均以下の企業よりもイノベーションによる収益が19ポイント高かった。
とはいえ、就職に学士号が必要なケースは少なくない。Intelligentの調査では、過去1年以内に「特定の職種で学士号の要件を撤廃した」と答えた採用担当者は53%だった。残り半数近くの企業では学士号が必要と思われ、多様性を確保する障壁のひとつになりかねない。
このような状況を改善する鍵になりそうなのが、InStrideという2019年設立の米国スタートアップだ。同社は従業員向け教育を展開。教育機関と提携しており、たとえば働きながらオンラインで学士号を取得することができる。50以上の企業に人材教育プログラムを提供
InStrideの創設者の一人であるVivek Sharma氏は、同社の設立前にマッキンゼーやYahoo!、ディズニーなど世界に名だたる企業を渡り歩いていた人物だ。教育への情熱の原点は、南カルフォルニア大学でデータサイエンスを教えた経験であると、Adam Mendler氏とのインタビューで語っている。
さらに同インタビューで、InStrideを設立した目的は「高等教育機関と企業のリーダーが協力して未来の労働力を育成すること」とも述べている。
実際、同社は50以上の企業に人材教育プログラムを提供し、48万人以上の従業員が借金なしで教育を受けられる機会を創出し、学生ローン5760万ドルの返済を回避した(学費の全額、または大部分を企業が負担するため)。
なお、Vivek氏は2023年にCEOを退任し、現在はCraig Maloney氏が後任を務めている。
従業員にも企業にも大きな恩恵
InStrideのプログラムを活用している従業員は、そうでない従業員と比べて昇進する確率が3倍に跳ね上がるという。
企業側のメリットも大きく、3年間(投資額1ドル)の平均ROIは226%、年間定着率はプログラム非参加者が63%であるのに対し、92%にものぼる。金銭的なリターンもさることながら、労働市場が逼迫する中、定着率の向上が企業に大きな恩恵をもたらすだろう。