より生物に近いロボットを開発するためには、様々な条件を達成しなければいけません。

例えば、「ソフトロボットであること」「自律的であること」「環境からエネルギーを得ること」などの要素は大切です。

最近、中国の浙江大学(Zhejiang University)に所属するジー・リエン・ウー氏ら研究チームは、シンプルな材料で作られた「メビウスの輪」ロボットを開発しました。

その柔らかいロボットは光が当たることでねじれ、移動したりビーズを集めたりするなど、単純な作業が行えます。

研究の詳細は、2024年4月23日付の科学誌『Advanced materials』に掲載されました。

生きているかのように動くメビウスの輪ロボット

小型のソフトロボットを開発するのは簡単ではありません。

ロボットの動作に必要な電力を供給したり、制御機構を小型化したりするのが難しいからです。

ところが今回、浙江大学に所属するジー・リエン・ウー氏ら研究チームは、光だけで動作するシンプルで小さなソフトロボットを開発することに成功しました。

ねじれるメビウスの輪ロボット
ねじれるメビウスの輪ロボット / Credit:Zi Liang Wu(Zhejiang University)et al., Advanced materials(2024)

このロボットは、水を内部に含む物質であるヒドロゲル(またはハイドロゲル)が材料になっています。

ヒドロゲルを薄いシート状に加工して重ね、その上に金ナノ粒子を固着させたのです。

そしてこのシートに光を当てると、金ナノ粒子が加熱され、ヒドロゲルシートが膨張してねじれるようになっています。

この動きを利用することで、光だけで動作するソフトロボットを作ることができます。

実際に研究チームは、この素材をねじって結合させた「メビウスの輪」ロボットを開発しました。

このロボットは光を当てるだけで、ねじれるように動き続けます。

光だけで綱渡りもできる
光だけで綱渡りもできる / Credit:Zi Liang Wu(Zhejiang University)et al., Advanced materials(2024)

このねじれを利用して、小さなビーズを集めたり、紐にぶら下がりながら移動したりできます。

他にも、垂直に立てた棒を登ったり、糸を巻き取ったりすることも可能です。

動画では、このロボットがまるで生きているかのように動いている様子が確認できます。

その動きを見ていると、「輪切りにしたばかりの新鮮なイカがピクピクと動く」ようなイメージさえ抱きますね。

非常にシンプルな動作とアイデアではあるものの、自然界や人間の体内で用いるなど、様々な応用が可能でしょう。

元論文

Closed Twisted Hydrogel Ribbons with Self-Sustained Motions under Static Light Irradiation

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部