改善されていない湘南の悪癖

筆者にとって気がかりだったのは、2023シーズンにも浮き彫りになったビルドアップ時の選手配置の悪さを、湘南が改善できていないことだ。

先日のG大阪戦と同じく、湘南の攻撃配置の悪さが顕著だったのが昨季のJ1リーグ第19節(横浜F・マリノス戦)。この試合の2失点目で、当時左ウイングバックを務めていたMF中野嘉大(現横浜FC)が自陣後方タッチライン際でボールを保持したことで、横浜FMのDF松原健のプレスをもろに浴びてしまっている。縦へのパスコースを塞がれた中野は味方GKソンへのバックパスを選んだものの、この時点で横浜FM陣営にパスコースを消されており、湘南のビルドアップは窮屈に。GKソンは味方DF杉岡大暉にボールを渡そうとしたが、この横パスを相手FWヤン・マテウスに奪われ、FWアンデルソン・ロペスのゴールに繋げられてしまった。

この日センターバックを務めた杉岡とウイングバックの中野が、ビルドアップ時にタッチライン際で共存してしまったことも、横浜FMのハイプレスの餌食となった原因と言える。攻撃配置の悪さが昨季の低迷の原因となったにも関わらず、先日のG大阪戦ではこの点に関する改善がほぼ見られず。昨季の横浜FM戦と同じようなミスで失点してしまった。この点を厳粛に受け止め、設計が甘すぎるビルドアップの改善に乗り出さなければ、J2リーグへの降格が現実味を帯びてしまうだろう。

鈴木雄斗 写真:Getty Images

後半の追撃も及ばず

幸いなことに、今回のG大阪戦ではDF岡本拓也と杉岡の両ウイングバックが自陣後方へ降りてビルドアップに関わるケースが少なかったため、湘南のサイド攻撃は分厚いものに。鈴木淳之介をはじめとするセンターバック陣の攻め上がりも旺盛で、ホームチームはサイドからいくつかチャンスを作ったが、ラストパスやクロスの精度が足りず。同点ゴールには至らなかった。

1点ビハインドで迎えた後半17分、湘南は一瞬の守備の綻びをG大阪に突かれることに。アウェイチームDF中谷進之介が自陣からロングパスを繰り出すと、これが敵陣の山下のもとへ。このボールを湘南DF杉岡がかろうじて弾き返したものの、こぼれ球を宇佐美が回収。宇佐美のラストパスに反応した山下が敵陣ペナルティエリアで杉岡に倒されたことで、G大阪にPKが与えられた。

相手ウイングバック(サイドバック)の背後へロングパスを送れば、センターバック背後へのパスと比べ相手GKが飛び出し難く、相手チームにボールを回収されても速攻を浴びにくい。また、相手ウイングバックの体の向きを変え、楽な体勢でクリアできないようなロングパスであれば、弾き返されたボールを回収しやすい。これらの点において中谷のロングパスは有効で、湘南はこの攻撃への備えができていなかった。

最終ラインが不揃いで、杉岡が跳ね返したボールへの反応も鈍かった湘南は、先述の通りPKのピンチを迎える。キッカーを務めた宇佐美に、これを物にされた。

途中出場のFWルキアンが後半33分にコーナーキックからゴールを挙げたものの、湘南の反撃もここまで。ビルドアップや守備の詰めの甘さを露呈したホームチームが、手痛い連敗を喫している。