スイスで今月15日、16日の2日間、「ウクライナ和平サミット会議」がルツェルン湖を望むホテル「ビュルゲンシュトック・リゾート」で開催される。サミット会議の開催地はスイスが誇る最高級のリゾート地だが、ウクライナ和平会議の成功に懐疑的な声が開催日が近づくにつれて大きくなってきた。

ストックホルムで開催された第3回ウクライナ・北欧首脳会議サミットに参加したゼレンスキー大統領(2024年5月31日ウクライナ大統領府公式サイトから)

和平会議のスイス開催案は、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)でウクライナのゼレンスキー大統領が要請したことがきっかけだ。会議は中立国スイスとウクライナ政府が共催する形で開催されるが、戦争の侵略国ロシアが招待されていないばかりか、ゼレンスキー大統領が期待していた中国も「ロシアの参加がない和平会議には意味がない」として参加を見送る意向を明らかにしたばかりだ。

中国外務省の毛寧報道官は先月31日、「会談の性質は中国の要求や国際社会の期待を満たしていないため、中国の参加は困難だ。和平会議にはすべての当事者による平等な参加と、すべての和平計画に関する公正な議論が含まれるべきだ。そうでなければ、会議が平和を回復する上で実質的な役割を果たすことは困難になるだろう」と述べている。要するに、紛争当事国の一国、ロシアが欠席した和平会議では本当の解決は期待できないというわけだ。

ロシアのプーチン大統領は先月16日に訪中し、習近平国家主席と首脳会談を行い、そこでスイス開催の和平会議には参加しないでほしいと強く要請してきたが、その甲斐があったわけだ。

中国側はウクライナ戦争ではこれまで中立の立場を装ってきた経緯がある。中国が「会議に参加する」と決めたならば、ロシアとの関係が一挙に悪化することが予想されただけに、中国側は欠席以外の他の選択肢はなかったのが実情かもしれない。欧米の情報機関は、中国がロシアに武器などの軍事物質を支援していると指摘している。

ちなみに、中国外務省は2023年2月24日、ウェブサイトで12項目の和平案を掲載し、両国に紛争の「政治的解決」を求めている。「和平案」という言葉は響きがいいが、実際は中国共産党政権の思想と合致している内容を「和平」という言葉でカムフラージェしているだけだ。和平案第12項目では、「一方的な制裁と圧力は問題を解決できず、新しい問題を生み出すだけだ」と明記している(「中国発『ウクライナ和平案』12項目」2023年2月25日参考)。