ミレイ政権になって1月からインフレが毎月下がっている
フェルナンデス前政権のインフレ高騰の影響はミレイ政権に代わっても当面は尾を引いてインフレは急激には下がらないと思われていた。国民もそれを承知で今年上半期は高いインフレも受け入れる覚悟をしていた。それでも、今年下半期でもインフレが下がらない場合は、ミレイ政権への支持は減少して行くことが懸念されていた。
ところが、今年1月のインフレは20.6%、2月は13.2%、3月は11%、4月は6.3%とインフレが予想以上のスピードで下がっているのである。5月も一桁のインフレが予測されている。
その理由には、上述した紙幣発行の大幅な削減を始め、中央銀行は政策金利を40%まで下げ、これまで政府が支出していた各分野への補助金の大幅な削減を実行。更に、地方政府への連邦交付金も廃止する方向に向かい、インフラ整備の為の新しい公共事業は廃止することにした。要するに、あらゆる分野でこれまで政府が無駄使いしていた歳出を徹底的に削減して行ったのである。
更に、ミレイ政権は小売の伸び悩みを解消させるべく、特にスーパーに価格設定の自由化を促進させた。それで初めて小売業者も販売の本格的な競争が始まったのである。それが功を奏して物が売れないというデフレ傾向と相まって小売価格が下がり始めたのである。
その成果がインフレ上昇率の急激な下降に見られるようになったというわけである。IMFもこの急激な変化に好意的な見方をしており、今年のインフレは150%、来年は45%と予想するまでになっている。この予測通りに進むと仮定した場合は、来年の毎月のインフレは4%以下になるということでアルゼンチンにとって奇跡的に低に物価上昇率になる。
更に、アルゼンチン経済が好転して行けば、IMFは150億ドルの借款を用意している。アルゼンチン政府にとってそれは外貨規制(セポご呼ばれている)の撤廃に役立つことになると見ている。この外貨規制というのは、外貨の外国への流出を防ぐものだ。
例えば、外貨(ドル)の送金や外貨の貿易取引に事前にそのための申請義務があるとか、貿易取引で業者は必要な外貨を事前に通知して了解を得なければならないとか、非居住者の外貨を取得することが禁止されているとか、更に、外国でクレジットカードを使用すると、それが課税の対象にされるといったことである。
アルゼンチンはこれまで慢性的に外貨が不足して来たアルゼンチンは国の経済規模の割に貿易取引が少ないから外貨の獲得源が小さい。更に、インフレは常に高く、企業の法的面での安全性に欠けることから外国からの投資も少ない。それらが影響してアルゼンチンでは外貨が慢性的に不足しているのである。だからその欠点を補うために外貨の外国への流出を常に防ぐ政策が実行されていた。だからアルゼンチンは外貨不足から解消されることはなく、外国の投資家にとってもアルゼンチンに投資することに魅力がないという現象が生じていた。
ミレイ大統領はアルゼンチンは100年前の世界のリーダー国のひとつだったポジションに復帰するだけの要素はあるとして、あらゆる分野で規制を極度に廃止させて自由経済を復活させ経済の発展を図るとしている。
現在、貧困層は増えている。しかし、彼らもミレイ大統領の経済復活策を信頼しているというのが現在のアルゼンチンの現状である。ミレイ政権が失敗すると、アルゼンチンは再び高騰インフレの国に逆戻りして経済は大混乱するということを知っているからである。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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