第二次世界大戦、日本と戦いを繰り広げていたアメリカの対日作戦には、あまりにも珍妙、荒唐無稽なものもいくつか存在していた。その中で、日本人の戦闘意識を失わせるため、いわば精神攻撃と銘打って”採用”されたとんでもない作戦がある。それはずばり、「富士山を真っ赤に塗りつぶす」という作戦である。
この耳を疑いたくなる作戦は、CIAの前身である「OSS」(戦略情報局 Office of Strategic Services)によってなされたものだ。1945年、OSSの組織内にある「神経戦部」という部隊が、アメリカ軍事司令部において日本人の士気を下げるための作戦を練る会議を行なった。その結果、とあるOSSの科学者が「富士山を真っ赤にする」ということを提案し、あろうことか採用になったのである。
「赤富士」というと、山肌に太陽光が当たって赤く見えるという現象が実際に見られ、葛飾北斎の『富嶽三十六景』の一図「凱風快晴」に代表されるように、絵画の題材にもなっている。山頂の雪面に反射して赤く見える「紅富士」と呼ばれる類似した現象もあるが、いずれにせよこれらは自然現象の一つだ。
ところが、当時OSSが提案したいわゆる赤富士作戦は、大量の塗料を使用して塗りつぶすというものであった。古くから和歌にもたびたび詠われる日本の象徴である富士、この景観を意図的にけがすという点については確かに強い悪意が感じられる。これは確実に効果があるだろうと、当時OSSで考えた人々も多かっただろう。
アメリカのオンラインマガジン「アトラスオブスキュア」の2017年3月1日付記事によれば、「日本の象徴的な富士山は、連合国と日本の宣伝活動の両方で頻繁に引き合いに出された。深い精神的、歴史的意味を持つ日本文化の根深い象徴であるフジヤマのイメージは、プロパガンダの強力なツールと見なされていた」として、この赤富士作戦を解説している。
しかし、冷静に考えてみれば、この作戦がきわめて非現実的なものであるかがすぐにわかる。富士山の規模を考えても、それを塗りつぶすのにはそれ相応の量のペンキが必要となる。その上、ペンキの運搬手段ということも考えねばならない。採用後に確認された試算によれば、ペンキを約12万トン、それを運搬するB29がおよそ3万機、そしてB29のガソリン代だけでも600億円ほどかかってしまうと判明したのだ。
作戦のスケールは確かに大きく、物量も日本に比べれば多いだろうが、さすがにこの次元はアメリカでも無茶であった。結局、日本が「非人道的行為」と宣伝してしまえば、余計に徹底抗戦の機運を高めかねないという懸念もあり、赤富士作戦は頓挫してしまった。
あまりにも奇妙な話ではあるが、実はOSSが提案したむちゃくちゃな対日作戦にはほかにも、日本の稲荷信仰に目を付けて「狐にとり憑かれたように思わせて日本人をパニックに陥れる」ための計画もあったと言われている。いくつかのアイデアが提案され、その中には生きた狐を発光塗料で塗りつぶし、夜に放って驚かすという冗談としか思えないような内容であったという。だが、これも狐を日本へ送る手段に目途が立たずに頓挫してしまったようだ。
日本人の信仰心をバカにしたような話ではあるが、裏を返せば戦時下における人間の合理性や心理などを知る上でも、貴重なサンプルであると言えるのかもしれない。
【本記事は「ミステリーニュースステーション・ATLAS(アトラス)」からの提供です】
文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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提供元・TOCANA
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