シンガーソングライターで俳優の星野源がNHKアナウンサーと不倫し、さらに所属事務所が10億円を支払ってもみ消した、との情報を流布したインフルエンサーに対し、事務所側は法的措置を検討すると発表。事務所はその後も、虚偽の投稿を拡散する行為にも警告を発している。実際に匿名で活動しているインフルエンサーは、どのような手順で訴訟を起こされるのだろうか。弁護士によると、早くても半年はかかるという。

 5月22日夜、X上で絶大な影響力を誇る暴露系インフルエンサーが、「超有名女優とドラマ共演して電撃結婚した男性歌手がNHKアナウンサーと不倫をしており、その男性歌手の所属事務所が10億円を払って記事をもみ消した」と投稿。この“男性歌手”が星野源を指すのではないか、との声が高まり、同日夜は星野源の名前がSNSでトレンドワードとなった。また、所属事務所のアミューズにも問い合わせが多く寄せられたという。

 騒動を受けてアミューズは件の投稿から約6時間後の23日未明、「星野源に関してそのような事実は一切ありません。また、当社が記事をもみ消したという事実も一切ありません」と、噂を完全否定。また、「名誉毀損などの違法行為については、当社あるいは当該アーティストにて、法的措置を含む対応を検討いたします」として、前出のインフルエンサーに対し、法的措置を検討すると発表した。

 星野本人もインスタグラムのストーリーズで「いまSNSやインターネット上などで噂されている件に事実は一切ありません。事実無根です」と否定。さらに、星野の妻で女優の新垣結衣も「火のないところに煙が立っているようですが、いま騒がれ噂されている件に事実はひとつもありません。心配してくださっている皆様、ご心配なく」と追随して否定コメントを発表した。さらに、星野のラジオ番組に新垣が電話出演し、あらためて2人で疑惑を否定しつつ、夫婦関係が良好であることをアピールしている。

どのように匿名の投稿者を相手に訴訟を起こすのか

 このインフルエンサーは匿名で活動しているが、このように本名を明かしていない人物を特定して提訴するには、どのような手続きを経る必要があるのだろうか。また、訴訟費用や日数はどのくらい見込めばいいのだろうか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、次のように説明する。

「SNSで誹謗中傷を見かけたら、①当該ログを残す、②発信者情報開示命令を申し立てる、という手順が必要になります。

 令和4年に関連法律が改正され、IPアドレス(投稿ごとに割り当てられる番号)と、名前や住所(IPアドレスを割り当てた、プロバイダ契約をしている人の情報)を同時に要求することができるようになりました。要する時間も3カ月から6カ月程度となり、迅速な開示が可能となりました。

 もちろん、法的手続きをせずに開示請求することもできますが、プロバイダ側は、ほとんど開示しません。

 この法律業務を、およそ15万円程度で提供している法律事務所が多いようです。

 ただし、この後、『投稿された内容が誹謗中傷にあたる』ことを理由とする損害賠償請求訴訟を提起することになりますが、どんなに早くても6カ月はかかります」

 2022年10月に施行された改正プロバイダ責任制限法では、インターネット上での誹謗中傷に対し、裁判手続きの簡略化が図られた。かつては誹謗中傷を行った人物を特定するために二度の裁判が必要だった。まずはコンテンツプロバイダにIPアドレス等の開示を求める訴訟を起こし、それが認められたらアクセスプロバイダに契約者の住所・氏名の開示を求めるという手順だ。この2つの訴訟が一度の裁判で済ませられるようになったことで、手続きは大幅に簡便になったと評する声が多い。

 なお、山岸弁護士によると、件の投稿内容は、星野源のことを指すと推定させるに十分な記述があり、星野源と所属事務所の名誉を毀損しているとして、数百万円単位の損害賠償が命じられる可能性もあるとの見解を示す。

 5月30日発売の「週刊文春」(文藝春秋)の記事ではインフルエンサーの人物像に迫っている。有名私大を卒業後に大手メーカーに就職し、ゲームの実況配信で人気を高めた。その後、Twitter(現X)で現在の地位を確立。かつては素顔で実況配信し、本名も何度か明かしているが、爆発的な影響力を持つようになった今、本名などの個人情報はほとんど表に出していない。それどころか、文春が個人情報に関する記事を出した場合には「即座に法的措置を取る」と宣言している。

 世の中で話題になっている噂話などをSNSで公開し、その噂話に関する情報を集めて拡散するという手法で耳目を集める暴露系インフルエンサー。YouTubeやXなど、さまざまなプラットフォーム上に暴露系インフルエンサーは存在するが、いずれも名誉毀損などの犯罪や不法行為が常に隣り合わせになっていることを肝に銘じておかなければならないといえる。

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

提供元・Business Journal

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