米国Rockwell Automationと英国IONETICは今年5月にパートナーシップ締結を発表した。EV(電気自動車)用バッテリーの開発から生産までを効率的に行える包括的なパッケージを提供する方針だ。

“駆動用バッテリー”開発にかかる多大なコスト

この数年で米国、欧州、中国などを中心に多くの新興EVメーカーが登場している。

EVには従来の自動車の技術に加えて、電動モーターやインバーター、充電機器などが搭載されている。その中で、EVのモーターを作動させる電力を供給する“駆動用バッテリー”は開発および生産に多大なコストを必要とする部分で、EVの航続距離や利便性などに関わる中心的な部品だ。

駆動用バッテリーは自動車メーカーが内製開発を行ったり電機メーカーなどと協業して開発したりしているが、年々EVに対する需要や性能要求が高まるとともにバッテリー開発に対するコストは増大している。

大手自動車メーカーであれば資金力を背景にした開発が行えるが、新興の中小自動車メーカーではバッテリーを自社で1から開発するコストは膨大なものとなる。

そこでRockwell Automationは、中小の自動車メーカー向けにEVバッテリーを低価格で提供している英国スタートアップのIONETICと複数年にわたる提携を結んだ。今後、中小の自動車メーカー向けにカスタマイズされたEVバッテリーの生産を開始できるよう支援する。

2社の得意分野を組み合わせた統合的なパッケージ

Rockwell AutomationとIONETICの協業によって、EV用バッテリーの設計、開発、評価から、生産工場の設計、バッテリー生産までを含めたパッケージが誕生する。

IONETICは、EVのバッテリーパック技術を専門とするメーカー。同社はこのバッテリー技術と独自の設計プラットフォームを活用してバッテリーパックの設計、製造、テストをワンストップで提供する体制を整えている。

一方Rockwell Automationは産業オートメーションの分野におけるパイオニアであり、さまざまな分野での効率的な生産体制の構築を行っている。IONETICとのパートナーシップにおいてはバッテリーパックの生産における工場設計から生産ワークフローの最適化などを担当し、Rockwell Automationの自動化ハードウェアや統合制御システム、そして「Emulate3D」などをIONETICに提供する予定だ。

Image Credit:Rockwell Automation

Emulate3Dは物流業・製造業向けの3Dシミュレーションソフトウェア。マシンやシステムを稼働させる前にパフォーマンスをテスト、デバッグ、検証することが可能だ。

これらの技術を活用して、IONETICは自社施設のデジタルツインを構築し、生産ラインをさらに拡張する方針を示している。

(文・いのうえみつみ)