危機管理の専門家もあきれる謝罪文

 だが、この謝罪文について、危機管理・広報コンサルタントの平能哲也氏は、「お粗末すぎる」とあきれる。

 まず、素材サイトから画像を購入して使用した件について、“基本的な想像力の欠如”と指摘する。

「結論から言えば、本件の関係者たちの『想像力の欠如』といえます。これは今回の危機事例に限った事でなく、企業などの組織や個人に至るまで、事件・事故・不祥事などの危機に共通する基本的なポイントです。危機管理や危機管理広報対応においては『マイナスの想像力』を持つことが最も重要でしょう。

 今回の事例で言えば、『製品紹介のサイトに、有料画像素材サイトで販売している写真(ストックフォト)が掲載されていたら、誰かがSNS等で指摘するに違いない』『製品紹介のサイトに載っている写真は当然新製品デジカメで撮ったものと思うに違いない』→だからそのような誤解を招く写真使用はやめておこう』といった具合に事前チェック可能な、極めて基本的で単純なことです。過去の多数の事例からも、危機というのは『基本的なこと』『単純なこと』を軽視した結果発生するのがほとんどと断言できます」

 次に、謝罪文については企業の外部向け文書の基本がなっていないと首を傾げる。

「こういった謝罪文に、年月日と社名(または事業部名)などが入っていないのはあまり記憶がない。また、文章が曖昧で抽象的。事実関係の説明が不足(=具体的な時系列での経緯など5W1Hの要素がほとんどなく、どうしてこうなったかの経緯がわからない)→よくある責任の所在を曖昧にする手法といえます。

 例えば、『検討が不十分であった』『新製品で撮影した写真ではないことへの注釈がお客様にとって、分かりにくい内容と場所での表記』とありますが、確認すると製品紹介のサイトの一番下に小さい文字で<画像・イラストは、効果を説明するためのイメージです>と記述されています。この記述を謝罪文のなかで引用しないのも、読み手に対して不親切です。また、『お客様にとって、分かりにくい内容と場所』の表現は、お客様側にも注釈を読んでいないことの非があるかのようにも受け取られかねず、感情を害する人もいると思われる内容です。

『認識を改めて』との表現も問題があります。つまり、今回のような不適切なこと(皆様から頂戴したご指摘)を特に問題なしと認識していた、とも受け取られる可能性があり、不要な言葉です。『変革をしていく事をお約束』との表現も、なんと大げさな、と驚きます。デジカメの紹介サイトやパンフレットに掲載された写真は、当然その新製品で撮影したと考えるのが常識的な感覚であって、“変革”ではなく基本や一般常識を持ってほしいというのがデジカメ利用者一般の意見ではないでしょうか。いずれにしても、“お粗末”の一言に尽きます」

 パナソニックでは、他のカメラ製品でもストックフォトを使っているとの指摘が相次いでおり、これまでも素材サイトの画像で製品説明をしてきたことがうかがわれる。謝罪文についても、パナソニックの公式ホームページ上のニュースページではなく、LUMIXの製品サイトとSNSのみでの掲載となっており、その謝罪文のなかにパナソニックの名前が出てこないことから、「パナソニックの名を隠そうとしている」との指摘も多い。謝罪文によって、かえって批判が出る悪い見本を作ったといえる。

(文=Business Journal編集部、協力=平能哲也/危機管理・広報コンサルタント)

提供元・Business Journal

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