最近、夏がどんどん暑くなっているように感じると思いますが、それは決して思い込みではありません。
英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)と独ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ(JGUM)の最新研究で、北半球における2023年の夏は過去2000年間で最も暑い夏であることが明らかになったのです。
2023年の夏は異例の暑さであり、過去2000年で最も平均気温の低かった年と比べると約4℃も高かったといいます。
研究の詳細は2024年5月14日付で科学雑誌『Nature』に掲載されました。
2023年は異例の暑さだった
地球の気温の推定値は時代を遡るほど曖昧になっていきます。
気象観測所による気温の記録は100年以上続けられていますが、それでもせいぜい1850年くらいまでしか遡れません。
しかし、だからと言って現代の気温と過去の気温を比較する術がないわけでもありません。
研究チームは今回、それを可能にする方法として「樹木の年輪」を調べる手法を用いました。
樹木の年輪は地球環境のタイムカプセルのようなものであり、年輪の幅などを見れば、その年の気温や降水量といった成長条件が特定できるのです。
チームは大規模な年輪年表を作成して、過去2000年間にわたる北半球の夏場(6〜8月)の平均気温を調べました。
その結果、2023年の北半球の夏は過去2000年間で最も暑かったことが判明したのです。
※ 過去2000年の北半球における夏の平均気温を示した図はこちらからご覧いただけます。
それまでで最も暑い夏は西暦246年頃のローマ帝国時代の最盛期でしたが、2023年はその年より約1.19℃ほど平均気温が高くなっていました。
反対に、過去2000年間で最も平均気温の低かった夏は西暦536年頃です。
この年は大規模な火山噴火が起きており、硫黄に富むエアロゾルが上空を広く覆ったことで夏の気温が急激に低くなったと見られています。
その平均気温は2023年の夏に比べると、約3.93°Cも低かったとのことです。
また2023年の夏の平均気温は、西暦1年から産業革命期にあたる1890年頃までの平均気温に比べて、約2.2℃も上回っていました。
2023年の夏がこれほど暑かったのはなぜなのでしょうか?
その原因について研究チームは、人為的な活動にともなう大気中の温室効果ガスの急上昇に加えて、太平洋の赤道域の海面温度が例年より高い状態が長く続く「エルニーニョ現象」が重なったことで引き起こされたと指摘します。
ヨハネス・グーテンベルク大学マインツの地理学者であるヤン・エスパー(Jan Esper)氏は「温室効果ガスの上昇によって引き起こされた2023年の高気温は、エルニーニョ現象によってさらに増幅されたため、より長く深刻な熱波と長期の干ばつに見舞われることになった」と説明しています。
今回の結果を受けて、研究主任でケンブリッジ大学のウルフ・ブントゲン(Ulf Büntgen)氏は、次のように話しました。
「このように長い歴史を概観することで、最近の地球温暖化がいかに劇的であるかがわかります。
中でも2023年は異常に暑い年でしたが、温室効果ガスの排出量を大幅に削減しない限り、この傾向は今後もさらに続いていくでしょう」
この調子で行けば、2024年の夏も記録的猛暑となりそうです。
参考文献
2023 was the hottest summer in 2,000 years
Not Only The Hottest On Record, Summer 2023 Was Hottest For 2,000 Years
元論文
2023 summer warmth unparalleled over the past 2,000 years
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部