これまでの研究で、2人の人物が共同作業をするとき、それぞれの脳活動の間には同期が見られることが知られていました。

そのシンクロ率は特に親子や恋人同士など、社会的つながりが強いペアほど高くなります。

しかし、初対面同士の脳波のシンクロ率がどうなるかは、あまり調べられていません。

そこで、早稲田大学の研究チームは今回、初対面ペアにおける脳波のシンクロ率がどうなるかを調査しました。

すると驚いたことに、知り合い同士のペアよりも、初対面ペアの方が脳活動のシンクロ率が高くなることが示されたのです。

研究の詳細は2024年2月29日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。

初対面で脳波はシンクロするのか?

私たちは日常生活の中で、他者とごく自然に共同作業をしています。

例えば、店員さんとのやり取りや誰かと一緒に料理をつくるときなど、言葉や動作を用いて誰かと相互的な協調作業を行っています。

しかし、相手によって「この人とはウマが合うな〜」とか「この人とは作業しづらいな」と感じることがあるでしょう。

これまでの研究では、2人の間の共同作業中には脳活動に同期が見られ、特に親子や恋人ペアといった社会的なつながりが強い2人ほど、脳波のシンクロ率が高くなることが知られています。

初対面だと脳波のシンクロ率はどうなる?
初対面だと脳波のシンクロ率はどうなる? / Credit: canva

その一方で、初対面のような社会的つながりがないペアについては、ほとんど注目されてきませんでした。

しかしながら社会学の研究者たちは「弱いつながり同士の方が強いつながり同士より、相互に伝達される情報が多様であり、新たなアイデアを生むイノベーションにつながる可能性がある」と考えています。

これはおそらく、初対面ペアにおいては互いのやり取りが習慣化・固定化されておらず、相互に知らない情報を教え合ったり、角度の違うコミュニケーションができるためでしょう。

研究者たちは、これを「弱いつながりの強さ」(Strength of Weak Ties:SWT )理論と呼んでいます。

実際、私たちの日常生活では、親しい人(家族や恋人)と過ごす時間より、見知らぬ人(店員さん)や社会的つながりが弱~中程度の知人(職場の同僚や先輩)と交流する時間の方が多くなりがちです。

そこで早稲田大学の研究チームは今回、初対面や知り合いレベルのペアに焦点を当てた調査を行いました。