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老後2000万円問題の現状とコロナによる影響
本当に老後2000万円は必要?
老後2000万円問題の現状とコロナによる影響
2019年6月に老後2000万円問題が発表されて以降、老後の資金準備に有効とされているiDeCoやつみたてNISAの申込件数が増加していきました。
さらに新型コロナウイルスの感染拡大により、国民の資産運用への関心は高まっていくことになります。考えられる理由としては、主に次の3つです。
自粛要請にともなう雇用環境の悪化
新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、国や自治体が企業に活動の自粛や休止を要請したことで、倒産や従業員の解雇が増加。老後の不安や将来の不確実性が高まり、国民が資産運用を検討するようになった。
リモートワークの影響
外出の自粛から、リモートワークを導入する企業が増加。自宅にいる時間が多くなったことにより、家計の無駄の見直しや、資産運用に関する学びの時間が増加した。
企業業績の悪化
企業の業績が悪化したことで、株価や投資信託などの価格が急落。購入のチャンスととらえる人が増えた。
確かに老後2000万円問題や新型コロナウイルスの感染拡大など、老後や将来が不安になる出来事が続きましたが、本当に老後に2000万円用意する必要があるのでしょうか?もう少し掘り下げて考えてみましょう。
本当に老後2000万円は必要?
老後2000万円問題は、総務省が想定した高齢夫婦無職世帯をモデルケースとして計算されています。
そのため、老後すべての世帯が2000万円以上必要ということではありません。老後資金を考慮する上では、個別に以下の点を考慮すると良いでしょう。
平均寿命は伸びている
老後2000万円問題は、65歳以降30年間生きるという前提での金額です。
ただ厚生労働省が発表している令和3年度簡易生命表によると、男性の平均寿命は81.47歳、女性は87.57歳となっているため、平均寿命から考えるなら、65歳以降30年分も老後資金を用意する必要はないかもしれません。
しかし平均寿命は毎年ほぼ着実に伸び続けていること、令和4年9月時点で100歳以上の高齢者は約9万人いることから、現在の平均寿命よりも長く生きる可能性については考慮しておくべきでしょう。
出典:「令和3年簡易生命表の概況」厚生労働省、「百歳プレスリリース」厚生労働省
退職金が減っている
厚生労働省が発表している就労条件総合調査によると、企業が給付する退職金額は減少傾向にあります。
雇用の流動化や、企業型確定拠出年金の普及により退職金を前払いする企業が増えたことも影響していると考えられますが、いずれにしても老後生活を送る上で重要な退職金が減少傾向にあることを踏まえて準備しておく必要があります。
【大卒退職給付額の推移】
年度 | 退職給付額 |
---|---|
平成15年 | 2,499万円 |
平成20年 | 2,323万円 |
平成25年 | 1,941万円 |
平成30年 | 1,788万円 |
出典:「平成15年就労条件総合調査の概況」及び「平成30年就労条件総合調査の概要」厚生労働省をもとに筆者作成
働き方の多様化
新型コロナウイルスをきっかけとした企業の倒産や従業員の解雇、給与の減少などにより、兼業や副業、フリーランスなど多様な働き方への期待が高まりつつあります。
政府としても、こうした多様な働き方を支援するルール整備を推進しており、今後も働き方の多様化は進んでいくと考えられます。
定年退職後も働けば、公的年金の不足額を補うことができるため、老後に向けて用意すべき金額は減らせる可能性があります。ただし高齢になれば病気のリスクも高まるため、いつまでも働けるとは限りません。
老後はあまり労働に依存しすぎない収入源も、早い段階で確保しておく必要があるでしょう。