深海生物たちの個性的な造形には舌を巻くしかありません。

ここ数カ月で「深海の新種生物を大量発見した」というニュースが相次いで報告されてきました。

しかし、その勢いは全くとどまることを知らないようです。

米シュミット海洋研究所(SOI)はこのほど、チリ沖で行われた新たな深海探査で、新種と見られる「未知の生物」を一挙に50種ほど発見したと報じました。

今度はどんな奇怪な生物が見つかったのでしょうか?

今年1〜2月に行われたチリ沖探査の続編!

今回の調査は、シュミット海洋研究所が今年1月8日〜2月11日にチリ沖で行った深海探査に続くものです。

研究チームは前回と同じ調査船ファルコー号(Falkor)に乗って、2月〜3月にわたる40日間の深海探査に出かけました。

ナスカ海嶺とサラ・イ・ゴメス海嶺(ピンク:海山、点線:国の保護領域、白線:生物・環境的に重要な場所)
ナスカ海嶺とサラ・イ・ゴメス海嶺(ピンク:海山、点線:国の保護領域、白線:生物・環境的に重要な場所) / Credit: CORAL REEFS of the HIGH SEAS COALITION

前回はチリ沖からイースター島までの約2900キロメートルに及ぶナスカ海嶺およびサラ・イ・ゴメス海嶺(Salas y Gómez and Nazca Ridges)が調査の対象地でした。

このたびの調査ではサラ・イ・ゴメス海嶺を越えてイースター島までの西側を中心としています。

ちなみに前回の深海探査で見つかった「未知の生物」たちはこちらの記事で紹介しました。

チリ沖の深海探検で「未知の生物」を一挙に100種以上も発見!

チームはイースター島の周辺に焦点を当てて、約7万8000平方キロメートルの範囲の海底をマッピングし、これまでに見つかっていなかった6つの海山を新たに発見しています。

そして遠隔操作型の水中ロボットを使って水深800〜1200メートルの深海を探査したところ、それぞれの海山には「未知の生物」を含む独自の生態系が築かれていることがわかりました。

結果としては、この海域での分布が確認されていなかった海洋生物を160種ほど確認し、そのうちの少なくとも50種は科学的に未記載の新種と考えられるという。

では、すっかり恒例となりましたが、新たに見つかった生物たちの珍妙な姿を一挙に見ていきましょう。

新発見された「未知の生物」たち!

まずはこちらのお魚。

フサアンコウ科の一種
フサアンコウ科の一種 / Credit: SOI – Salas y Gómez Ridge – FKt240224 – Press Release(2024)

これは”海のヒキガエル(Sea toad)”と呼ばれるフサアンコウ科(学名:Chaunacidae)の一種と見られ、イースター島南西側の水深600メートルの場所で見つかりました。

丸々としたぼってりボディが愛らしいですね。

続いてはこちら。

平べったくて茶色い見た目はかなり地味ですが、実は驚くべき発見だといいます。

最も深い場所で光合成ができる「センベイサンゴ」
最も深い場所で光合成ができる「センベイサンゴ」 / Credit: SOI – Salas y Gómez Ridge – FKt240224 – Press Release(2024)

この生物はセンベイサンゴ(学名:Leptoseris)という既知種ですが、これまでに最も深い場所で光合成ができる生物として知られています。

そして今回は水深1200メートルの場所で見つかり、センベイサンゴの生息域として最高深度を更新しました。

お次はサンゴの中でジッとしているコシオリエビ上科(Squat lobster)の一種です。

サンゴの中で静態するコシオリエビ
サンゴの中で静態するコシオリエビ / Credit: SOI – Salas y Gómez Ridge – FKt240224 – Press Release(2024)

場所はサラ・イ・ゴメス海嶺沿いにある無人島の水深1200メートルあたりで発見されました。

コシオリエビは以前の探査でも見つかっていますが、こちらの方が色が淡く、また別の新種の可能性があります。

それから見た目がクールでカッコいい深海魚も発見されました。

英語では「ドラゴンフィッシュ(dragon fish)」と呼ばれている
英語では「ドラゴンフィッシュ(dragon fish)」と呼ばれている / Credit: SOI – Salas y Gómez Ridge – FKt240224 – Press Release(2024)

こちらは水深800メートルで見つかった「ワニトカゲギス科(Stomiidae)」の一種と推測されています。

青色に発光する鮮やかなボディが印象的で、口内には無数の鋭い歯を持ち、それで他の生物を捕食しているとのことです。

ヒトデの姿も確認されました。

カンムリヒトデの一種
カンムリヒトデの一種 / Credit: SOI – Salas y Gómez Ridge – FKt240224 – Press Release(2024)

こちらは水深600メートルで見つかったマヒトデ科に属するカンムリヒトデ(学名:Coronaster)の一種です。

私たちに馴染みの深い星形ヒトデの倍の数に当たる10本の腕を持っています。

そして今回の目玉となるのが、こちらの生物です。

クダクラゲ目の一種と見られる
クダクラゲ目の一種と見られる / Credit: Schmidt Ocean – Unexplored Seamounts of the Salas y Gómez Ridge | 4K ROV Highlights(youtube, 2024)

これは水深900メートル付近で見つかったクダクラゲ目のボウズニラ科に属する一種と推測されています。

英語では”空飛ぶスパゲッティ・モンスター(flying spaghetti monster)”と呼ばれており、無数の触手でもって悠然と深海を漂います。

まるでクトゥルフ神話にでも出てきそうな奇怪な姿です。

理解を超えた不思議な深海生物!今度は太平洋で奇妙な「未知の生物」を発見!

深海探査を率いた海洋生物学者のハビエル・セラネス(Javier Sellanes)氏は「2回の調査で明らかになったことは、この辺境の地について私たちがいかに何も知らないかということです」と話しました。

地球の深海底は今、およそ80%以上が未調査のまま残されているため、ほとんどが未知の領域なのです。

近年は遠隔操作できる水中ロボットの開発など、深海探査の技術が急速に進歩しているおかげで、こうした一連の発見が可能となっています。

ここ数カ月ですでに何百種という未知の生物が見つかっていますが、これでもまだまだ序の口に過ぎないでしょう。

こちらはチリ沖の深海探査で見つかった生物たちの4Kハイライト映像です。

参考文献

Scientists Find Pristine Ecosystems on High-Seas Seamounts

Gallery: 50 new marine species found, including this unimpressed sea toad

Underwater mountain range off Easter Island hosts creatures unknown to science, expedition reveals

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部