出産現場ではまれに、赤ちゃんが羊膜の袋に包まれた状態で生まれることがあります。
これをエンコールバース(En Caul Birth)と呼びます。
その様子はまるで水風船に閉じ込められているようで、とても神秘的です。
水の中に浮いているので、英語圏ではマーメイド・バース(人魚の出産)と呼ばれたりもします。
しかし初耳の方からすれば、すでに脳内は「?」でいっぱいでしょう。
どうしてエンコールバースは起こるのか、どれくらいの頻度で発生するのか、羊膜に包まれたままで赤ちゃんに危険はないのか、などなど。
ここではそれらの答えも含め、エンコールバースについて詳しく見ていきます。
「エンコールバース」とは?
胎児はふつう、母親の子宮内で「羊膜」という透明の薄い袋に包まれた状態にあります。
羊膜の中は「羊水」という液体で満たされており、クッションの役割を果たして、胎児を強い衝撃から守ります。
また体温を調節して母体の温度変化の影響を受けないようにする機能もあり、羊膜は胎児の保護と成長に欠かせない場所です。
妊娠期間中、胎児は子宮内を自由に動き回りますが、大きくなるにつれて羊膜内に動くスペースがなくなっていきます。
そして出産日が近づくと、胎児は出産に備えた姿勢を取り、産道のトンネルを下る準備をします。
いよいよ陣痛が始まると、羊膜が破けて中の羊水が流れ出します。いわゆる「破水」です。
破水が始まると、胎児が羊膜の袋を破って母体から外に出ようとする合図となります。
ところがごく稀に、胎児を包んでいる羊膜がまったく破けない状態で生まれることがあります。
これが「エンコールバース(En Caul Birth)」です。
エンコールバースとは日本語にすると「被膜出産」というような意味で、胎児が羊膜を被った状態で生まれることを意味します。
では実際に、最近報告されたエンコールバースの映像を見てみましょう。
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このように羊膜が破れていないので、赤ちゃんはまだ羊水の中に浸っている状態です。
米マサチューセッツ総合病院の産婦人科医であるジェニファー・ボイル(Jennifer Boyle)氏によると、羊膜は出産中にほぼ必ず破れるので、エンコールバースの発生率は非常に低く、推定では8万人に1人の割合だといいます。
では、エンコールバースが起こりやすくなる原因は何なのでしょうか?