これはどういうことか。逆の立場から考えるとわかりやすい。例えば、あなたが金融機関の融資担当者だったとします。資金繰りに困っている二つの会社が融資をしてほしいと相談に来ました。一社は長く付き合いのある、過去に融資を実行している会社。いまは厳しいかもしれないが、これまで返済が滞ったことのない会社。もう一社は、これまでに取り引きのない、初めて知る会社。同じような業績なら、どちらに貸します? ってことです。

当然、初見さんには怖くて貸せない。「初めまして」で、会社が苦しくてお金がない会社、不安で貸せないですよね。一方で、取り引きがあれば、会社の収益構造も知っているし、社長の人柄も知っている。いまは苦しい状況だけど、事業計画を見れば挽回できそうな可能性が見いだせるかもしれない。

さらに、現在進行系で貸しているお金があるとすれば、倒産してしまったら回収できないわけで、金融機関もなんとかしようとする。金融機関側から考えるとわかりやすいでしょう。取り引きがあるかないかで、これだけ初手が違うのです。

金融機関と取り引きがない場合:果たして、窮地に一発逆転は可能なのか?

それでは、これまでまったく金融機関と取り引きがない場合はどうするのか。これはなかなかの絶望的な状況です。前述のとおり、初見さんで赤字ってなかなか貸せる要素がありません。

でも、可能性がゼロかといえば、苦しいのですがゼロではありません。できることは残されています。

例えば、ノンバンクやビジネスローン。個人のクレジットカードのキャッシングや消費者金融。これを使うことで、金融機関の評価は下がってしまいますが、金融機関から借りられないのであれば、仕方ありません。短期的にこれらを使い、正常に戻せる余力があれば、これらの方法を選択するのもひとつ。

でもその前に、一度は日本政策金融公庫に行く。まずはこれをやるしかありません。日本政策金融公庫も政府系とはいえ、金融機関です。ですから、やっぱり取り引きがある方が有利。創業融資も受けていません、コロナ融資も受けていません、自己資金は使い果たしました、という場合でも、ダメ元で行くべきです。

状況は最悪でも、日本政策金融公庫に行けば、可能性はゼロじゃありません。もしかしたら、100万円でも融資が出る可能性があるかもしれない。「100万円ぽっちじゃ、会社の立て直しなんかできない」という意見もあると思いますが、日本政策金融公庫との取り引き実績ができれば、他の金融機関からも借りられる可能性が出るわけです。「厳しそうな会社だけど、日本政策金融公庫さんが貸したのならば、大丈夫なのかもしれない」と。

もちろん、試算表、資金繰り表、経営改善計画書は必ずつくります。その上で、やれることは何でもやる。こうした姿勢があれば、奇跡が起こる可能性はあるのです。まあ、それでも奇跡と呼ぶくらいの確率になってしまいますが…。絶体絶命の窮境を脱出できるのか否かは、日頃の金融機関との関係性が左右するのかもしれませんね。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士 1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。 会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年4月15日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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