「おもてなし精神」でシンプルな決済を実現
Razorpay公式サイトの支払いのデモを試してみたところ、シンプルそのもので、オンライン決済が初めてでも、直感的に支払いを済ませられそうだった。こうしたシンプルな仕組みの裏では、さまざまな工夫がなされている。たとえば支払い画面の色は、それぞれの店のイメージカラーが採用されるという。エンドユーザーに違和感を抱かせないためだ。
また、一見すると「問題」とは思えない「ちょっとした不便」にも踏み込んでいる。たとえば、クレジットカード番号をRazorpayに登録しておけば、店が変わっても再度入力しなくても済む。通常は電子マネーを使う際に各電子マネーのサイトやアプリへのログインが求められるが、Razorpayならその必要もない。
店側がRazorpayの支払い画面を導入する場合も、特別なプログラミングの知識は必要ない。テンプレートを選び、必要事項を記入していくだけだ。
Razorpayはこのような「おもてなし精神」で、ミッションである「オンライン決済をシンプルに」を実現している。
PayPalとの提携・マレーシア企業の買収
Razorpayはインドだけでなく、世界も見据えている。2020年12月にはPayPalと提携して国際送金を取り扱い始めたほか、2022年2月にはマレーシアのフィンテック企業であるCurlecの買収を発表。2023年7月に「Curlec by Razorpay」の立ち上げを発表し、マレーシアでも決済の仲介を担い始めた。
自国で培ったきめ細かいノウハウは、マレーシアでも大いに活用できるだろう。シンプルな決済より複雑な決済を好む人はいないからだ。
シンガポール政府系投資ファンドから資金を調達
Razorpayは2021年4月、シリーズEラウンドで1億6000万ドルを調達し、評価額が30億ドルに達した。この資金調達を主導したのは、Sequoia CapitalとGIC(旧:シンガポール政府投資公社)だった。
一国の政府がRazorpayの今後の成長に期待しているとも解釈できるわけで、GICからの資金調達の意義は大きいだろう。
決済金額の拡大が飛躍のカギか
ここまで順調すぎるほどの成長を遂げてきたRazorpay。今後、インドでオンライン決済の金額が拡大すれば、同社もさらに飛躍できるかもしれない。
冒頭で書いたとおり、2022年度のオンライン決済の件数は2018年度比で5倍近くになったが、金額は1.3倍程度の伸びに留まったからだ(参考)。少額の決済に好んで使われていることが読み取れる。少額の決済に好んで使われているのだろう。
インド全体のオンライン決済金額が拡大すれば、Razorpayの収益にも寄与することは間違いない。Razorpayは加盟店の売上に応じて手数料を得ているからだ。
とは言え、Razorpayはローンの取り扱いや海外展開など、収益源の多角化を進めている。次の一手に注目したい。
参考・引用元:Razorpay
(文・サト)