支持政党の傾向など政治的スタンスというのは、個々人の性格や日々の情報収集、あるいは自らの社会的・経済的な状況によって左右されると思われています。

しかし意外にも、政治的立場のいくつかは「生まれつき」決まっているのかもしれません。

ノルウェー国立公衆衛生研究所(NIPH)とオスロ大学(UiO)は最新研究で、政治的立場が私たちの遺伝子と深く結びついている証拠を見つけたと報告しました。

中でも特に「右翼的権威主義」「社会的支配志向性」の2つ(後述します)は遺伝的な影響を受ける可能性が高いという。

もしかしたら世襲議員の大半が親と政治的立場を同じにするのも、遺伝子と関係しているのかもしれません。

研究の詳細は2024年2月22日付で学術誌『Journal of Personality』に掲載されています。

「右翼権威主義」と「社会的支配志向性」とは?

「右翼権威主義」と「社会的支配志向性」の2つは、人々の政治的な態度と行動を予測する因子として、広く研究されてきた心理特性です。

まず右翼権威主義には、大きく分けて3つの特徴があります。

1つ目は強い権威や権力に服従する傾向、2つ目は社会規範やルールを破ったり反対する個人および集団に対する高い攻撃性、3つ目は伝統的な権威や価値観に過度に固執する傾向です。

右翼権威主義の傾向が強い人々は、国の権力や秩序、伝統を重視し、これらの公約を掲げる政党や政策を支持する態度を取ると予測されます。

一方の社会的支配志向性は、集団間の不平等や格差を支持する個人の性向を指します。

例えば、「あの集団は他の集団に比べて劣っているから不平等も仕方ない」という考えや、「この集団は他より優れているから優遇される価値がある」といった考えです。

社会的支配志向性の傾向が強い人々は、社会的・経済的な地位が低いとされるグループへの差別を含め、格差をより広げるような政党や政策を支持する態度を取ると予測されます。

要するに「世の中には勝ち組と負け組があり、それは自己責任だ」と考えるような態度です。

社会的支配志向性の傾向が強いと、世の中の格差を認める
社会的支配志向性の傾向が強いと、世の中の格差を認める / Credit: canva

この2つの心理特性は政治的態度の予測因子として十分に認知されている一方で、遺伝的な影響をどのくらい受けるのかは知られていません。

そこで研究チームは、2つの心理特性が「先天的な遺伝子」と深く結びつくのか、それとも「後天的な性格特性」と深く結びつくのかを明らかにすべく、双子研究を行いました。

双子研究は、個人に見られるある性質が、生まれつき備わっている先天的な気質なのか(Nature)、それとも生まれた後の養育や教育で獲得される後天的な気質なのか(Nurture)を調べる上で、とても有効な方法です。

双子研究では、理由合って異なる家庭環境で育った双子を比べるという方法もありますが、通常そうした人見つけることは非常に困難なので、同じ家庭で育った一卵性双生児と二卵性双生児を見比べるという方法が取られます。

もし、一卵性双生児(遺伝的に100%同じ)では高い頻度で一致する要因が、二卵性双生児では見られなかった場合、その性質は遺伝的な影響で形成された可能性が非常に高いと考えることができます。

逆に、どちらでも一致していたら、その性質は育成環境の影響を強く受けていると考えられます。

チームはこの検証を「右翼権威主義」と「社会的支配志向性」で行いました。