情報とは何なのか?
「最後に少し情報とは何か?」について、少し考察したいと思います。
情報は、私たちの生活のあらゆる側面に浸透しています。
古典的な意味での情報は、文字、数字、記号など、何らかの形で表現され、伝達される知識やデータです。
しかし、量子情報はこの概念を根底から変えてしまいました。
量子と情報、この二つの言葉が交差すると激烈な化学反応が起こるからです。
量子情報の基礎にあるのは、「量子ビット」と呼ばれる量子力学の基本単位です。
古典的なビットが0か1のどちらかの状態を持つのに対し、量子ビットは0と1の状態を同時に持つことができる「重ね合わせ」の状態になりえます。
これは量子情報が古典的な情報と根本的に異なる性質を持つことを意味します。
量子もつれは、量子情報のもう一つの鍵となる概念です。
2つの粒子がもつれると、一方の状態を測定することで即座にもう一方の状態が決まるという、不思議な関係になります。
この性質は、量子テレポーテーションや量子暗号といった技術の基礎となっています。
情報とは何かという問いに対して、古典物理学の観点から考えると、それは可能性の収束に向けた一本の矢印です。
ですが量子力学の観点から考えると情報は可能性の拡散と収束の両方に向かう矢印となります。
それゆえ量子情報は、古典的な情報が持つ限界を超え、計算の効率性、通信の安全性、さらには我々の物理世界に対する理解を根本的に変えうる力を持っています。
量子と情報、この二つの組み合わせはまだ多くの謎に包まれています。
しかし、その謎を解き明かすことができれば、私たちは未知の領域への扉を開く鍵を手にすることになるでしょう。
参考文献
量子もつれの伝達速度限界を解明-ボーズ粒子系における新たな理論的発見と量子計算への応用-
元論文
Effective light cone and digital quantum simulation of interacting bosons
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部