朝倉遺跡(一乗谷朝倉氏遺跡)は、福井県福井市にある遺跡であり、織田信長に滅ぼされるまでのおよそ100年に渡って越前国を支配していた戦国大名朝倉氏の館と城下町の跡地である。国内で唯一、城下町跡が良好な状態で残っていた遺跡であることから、火山灰によって多くの物品や生活の様子が保存されたことで知られるイタリアのポンペイになぞらえ、「日本のポンペイ」とも呼ばれている。
朝倉氏は、応仁の乱で荒廃した京から訪れていた多くの文化人によって栄えていた一乗谷を、5代に渡って治めていた。人口は、1万人を超えていたとも言われており、越前の中心地として栄華を極めた城下町となっていた。
しかし、1573年の刀禰坂(とねざか)の戦いによって、織田信長に大敗した5代朝倉義景は、一乗谷を放棄して大野に逃れ、その後信長の軍勢により火を放たれた一乗谷は灰燼に帰してしまった。それとともに、城下町跡は400年もの間、田畑の下に埋もれることとなってしまったのである。
朝倉遺跡が日の目を見るようになったのは、1967年の発掘調査であると言われている。実はそれ以前から唐門が現存しており、庭石の一部が露出していたことが知られていた。1967年に、地上へ出ていた庭園部分の整備・調査が行なわれたことで、地下から見事な庭園が発掘されることとなった。
1971年には、278ヘクタール、東京ドームにしておよそ60個分もの敷地が国の特別史跡に指定され、その後も懸命な調査により発掘された4つの庭園が国の特別名勝となり、出土品2343点が国の重要文化財に指定されることとなった。
越前国は奈良時代から大国とされており、得られる年貢も莫大であったと言われている。発掘品の中には、貿易によって得たものとされる中国の陶磁器やヴェネチアンガラスなど、当時の一級品も数多く見つかっていることから、越前及びその本拠地である一乗谷がどれほど商業・経済活動の活性化した大都市であったかがわかる。また、これにより当時の朝倉氏の経済力がどれほどに高かったかが窺い知ることもできるだろう。
前述した通り、朝倉遺跡は戦国時代の暮らしぶりがわかる資料が膨大に出土しており、武家屋敷や寺院、道路に至る当時の街並みがほぼ完全な状態で発掘されている。さらに、「特別史跡」「特別名勝」「指定重要文化財」という三重指定を受けた遺跡は、全国でもごくわずかでありきわめて貴重な遺跡となっている。
近年においては、2020年度の大河ドラマ『麒麟がくる』にて最後の当主義景を俳優ユースケ・サンタマリアが演じたことで朝倉遺跡が注目された。また、真上から遺構を眺めることができるようガラス床の設置が現在も行なわれており、2025年には完成予定であるという。
文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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提供元・TOCANA
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