釣りの餌としてミミズは最適な存在である。それを売って商売する立場ともなれば、大量のミミズを捕獲する必要が当然でてくる。実は、今からおよそ100年以上前から、ミミズを大量に捕まえるための技がアメリカやイギリスなどで使用 されていたのである。地中からミミズを呼び出すこの方法は、「ワームグランティング worm grunting」と呼ばれている。

 ワームグランティングは、まず地面に木の棒(杭)を打ち込み、この棒をルーピング・アイアンと呼ばれる平たい金属片でこする。なんともシンプルであるが、これが驚くほどの効果をもたらす。 たちまち地面の下から数十、数百もの数のミミズが地表に出てくるのだ。この効果は凄まじく、10メートル以上も離れた地面からミミズが這い出てくることもあ るほどである。特にこの技を熟達させたプロは、「ワームグランター」と呼ばれている。

 この魔法のような技の鍵を握っているのは、棒に金属片をこすらせた時に生じる震動である。しかし、当然のように実践されてきたこの方法で、なぜミミズが地表へ出てくるのかは長い間謎とされ、多くの研究者たちが様々な仮説を唱えることとなった。

 例えば、震動の不快感から逃れるためではないかという説。震動がミミズの身体に刺激を加え、その感覚から逃れる為に地表へ出るという仮説であるが、地表へ向かうということは当然ながら震源へ近付くこととなる。もし震動から逃れるのであれば、むしろより深く潜るのが最適だ。

 そして、震動を雨音だと思って地表へ出てくるという説もあった。雨が降ることで地中に水分が溜まり、それによって溺れることを回避するために地表へ出るというこの仮説は、進化生物学者ケニス・カタニアによって実験観察が行なわれた。その結果、およそ300匹のミミズがいる土に1時間もの雨が降り注いだもの の、地表へ出てきたミミズはほんのわずかだったという。

 その他にも、震動がハーメルンの笛吹きのような役目を果たしているという珍説までが登場していたワームグランティングであるが、実はその解明の糸口は意外な人物によって既に唱えられていた。 その人物の名はチャールズ・ダーウィン。『種の起源』 などの著書で知られる19世紀の偉大な自然科学者だ。

 彼の生涯最後の著書『ミミズと土』(1881)は、40年に及ぶミミズ研究の集大成とも言えるものであった。彼もまた棒をこすると地面からミミズが出てくることに疑問を抱き 実験を行なっていたのだが、そこで次のような仮説を立てていた。それは、「ミミズは棒の振動をモグラに追われていると勘違いしている」というものであった。

 先に登場したカタニアは、このダーウィンの仮説に着目して本格的な実験を試みた。モグラは自分の体重ほどもあるミミズを捕食する動物であり、実際に一定の土壌に一匹のモグラを放つと、雨の実験とはまるで違い3割以上のミミズが這い出てきたのである。さらに分析の結果、こすった棒と地中を掘るモグラの振動数が非常に近いことが判明し たのである。実は、このワームグランティングに似た方法を使う動物が存在している。セグロカモメやモリイシガメなどは、足を使って地面を鳴らし、 エサであるミミズを引き寄せているのだ。

 ミミズが天敵から逃れるための習性を利用していたということが、1世紀以上経ってから判明したワームグランティング。なんとイギリスでは、これによってミミズを集める競技が伝統的に行なわれているという。2009年には、 イギリスの10代の少女がピッチフォークを地面に突き刺し、 その農具を叩いて震動させることで30分に567匹のミミズを地 上におびき出すという世界記録まで叩き出したそうだ。

【参考記事・文献】
ミミズ遣いのワザ
書評 「カタニア先生は、キモい生きものに夢中!」
雨が降ると地上に出てくるミミズの生態を解説

【本記事は「ミステリーニュースステーション・ATLAS(アトラス)」からの提供です】

【文 黒蠍けいすけ】

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提供元・TOCANA

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