知覚の成立とはなにか
人はどのように物事を認知しているのでしょうか。すべての知覚は、仮説と修正によって成立しています。人を通じて得た情報と、仮説を高速で照らし合わせていると著者は言います。
「すべての知覚は、仮説とその修正であるという理論があります。この理論によると、まず人は、自分の中に『外の世界とはこうなっているはずだ』とい」仮説があり、感覚器官を通じて外から得た情報と、その仮説を高速で照らし合わせているそうです」(著者)
「そして、何度か修正と外の情報との照らし合わせを繰り返し『修正する必要がなさそうだ』ということになったら、修正をやめてその内容を認知するというわけです。人間の認識とは、『おおよそ、その辺の形はこんな感じで、色合いはこんな感じで』と予測するのです」(同)
ところが、修正が途中で終了すると「間違ったものが認知されるリスクがある」と著者は言います。これが、認知の歪み「認知バイアス」につながります。
「こうしたことは常に起こり得ることで、リーダーに限らず、人間であればもちろん等しく全員に起こることです。これが認知の構造である以上、人であれば認知が歪む可能性は、常にあるというわけです」(著者)
リーダ—は決定権を有する「人の認知が基本的に仮説を外の状況と照らし合わせて正しいかどうか確認していく、正しそうだと思ったところで、照らし合わせるのをやめる、そういった仕組みで成り立っているという視点はとても大事です」(同)
リーダーに、バイアス対策が必要な理由はなんでしょうか。リーダーは集団や組織の意思決定をする立場にいるからです。次のような現象を目にしたことはありませんか。
「こういう会議を想像してみてください。営業部、企画部、開発部が出席し、新商品の名前を決める会議があったとします。 このとき、すべての意見を出し尽くしたころに、遅れて会議室に入ってきたワンマン社長が、おもむろに『商品名は〇〇にする。もう決めた!』と宣言し、会議に関係ない ところで商品名が決まってしまったとしたらどうでしょうか」(著者)
独裁リーダーのよくある話「社長が最初から会議に参加していて、議論が出尽くした段階で最終的に『どの部署の言い分にも一理あるが、もう時間もないから自分の責任で決める』という流れだったら、納得もいくでしょう。しかし、そういったやり取りもなく、会議の経緯なども飛ばして、リーダーが独断で決めてしまったら、一種の独裁と言えそうです」(同)
独裁では組織メンバーの士気が下がります。独裁による決定がおこなわれる場合、その判断が間違っていても修正が効きません。これは組織にとって大きなリスクです。
しかし、現実にはこのようなリーダーは多いのです。とくにベンチャー系にはこのようなリーダーがそろっています。合議制をとっていたら時間もかかるし手間もかかります。だったら、リーダーの一存で決めてしまって構わないとする経営者が多いのです。
独裁リーダーは自分のことを独裁とは思っていません。「意思決定が早く仕事がデキる」とすら感じているでしょう。このようなリーダーは、あとからかなりの頻度で意見や考えが変わることあります。自信がないからコロコロ変わるわけですが、逆に臨機応変とも言えます。
本書には、リーダーにまつわる様々な事象が紹介されています。細かいディテールを見ていくと、その実態に正解はないようにも思われます。いまは、組織への対応力を高めながら、したたかに生きることが求められているのかも知れません。組織感覚力を高めていきましょう。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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