六本木ヒルズ森タワー53階にある 森美術館では、4月24日(水)~ 9月1日(日)の期間「MAMリサーチ010」「MAMスクリーン019」展を開催。

同展は、1980年~1990年代に当時最新技術だったビデオを使用し、美術作品を制作した台湾のパイオニアたちの活動に注目し、その作品を紹介する。

本物のアートに触れよう。

チェン・ジエレン(陳界仁) 《閃光》 1983-1984年頃 ビデオ、白黒、サイレント 3分30秒(ループ)

ビデオで美術作品の制作を行った台湾の作家たちに注目

最新技術だったビデオで美術作品を制作した台湾の作家たちの活動に注目する同展は、台北で開催された「啓視録:台湾のビデオ・アート1983-1999」展のエッセンスを凝縮したものだ。

今回は「MAMスクリーン019:1980~1990年代、台湾ビデオ・アートの黎明期(上映編)」と「MAMリサーチ010:1980~1990年代、台湾ビデオ・アートの黎明期(展覧会編)」の2部に分けて紹介する。

台湾のビデオ・アートは、1983年~1984年に誕生。日本に留学していたカク・イフン氏は、1983年に台湾アート界初のビデオ・インスタレーションを制作し、同年末にはガオ・チョンリー氏が、台北での自身の写真展で、監視カメラとモニターを使った作品を発表。同様の時期にはチェン・ジエレン氏が、監視社会に言及するビデオ作品を制作したといわれている。

その後、現在の台湾アート・シーンを代表する作家たちが、映像作品の制作を始め、20世紀末までにその表現は多様化し、映像を扱う作家の層も厚くなっているという。

ガオ・チョンリー(高重黎) 「1983年高重黎写真展」雜誌広告 1983年

MAMリサーチ010&MAMスクリーン019の展示内容

「MAMリサーチ010」では、この時代の実験的な試みや新しい表現の追求、映像などメディアについての思想を、作品・記録映像・テキスト・書籍・資料・や年表などによって紐解く。

紹介作家は、チェン・ジェンツァイ氏、チェン・ジエレン氏、ホン・スージェン氏、ガオ・チョンリー氏、カク・イフン氏、リー・グァンウェイ氏、リン・ジュンジー氏、ロ・メトク氏、ワン・ジュンジェ氏、ユェン・グァンミン氏の10名。但し、資料展示のみの作家も含まれる。

カク・イフン(グオ・イーフェン/郭挹芬)、ロ・メトク(ルー・ミンドー/盧明德) 《サイレント・ボディー》 1987年 パフォーマンス、5チャンネル・ビデオ(白黒、サイレント)、ブラウン管モニター、枝、白い布 サイズ可変 展示風景:「実験芸術:アクアクション・スペース」台北市立美術館、1987年

リー・グァンウェイ(李光暐) 《共生》 1993年 CRTモニター、スピーカー・ドライバー、キャビネット、ラック

「MAMスクリーン019」では、社会的なメッセージを持つもの、実験映像の手法を取り入れたもの、マスメディアへの言及や、パフォーマンスの記録など、台湾のビデオ・アートの多様性に注目し、年代順に上映する。

上映作品は、ホン・スージェン氏の「東/WEST」、ユェン・グァンミン氏の「帰り道で」、・ワン・ジュンジェ氏の「キラー・ガール、オデッセイⅢ」、チェン・ジェンツァイ氏の「鐘の音」、リン・ジュンジー氏の「グラスII」の5作品。

同プログラムは全体約40分で、10時から21時まで、1時間毎に上映。但し、4月30日(火)、8月13日(火)を除く火曜日は、17時閉館で、最終上映回は16時となる。

リン・ジュンジー(林俊吉) 《グラスⅡ》 1997年 ビデオ、カラー、サウンド 9分14秒 写真撮影:サンドラ・リースマン

ユェン・グァンミン(袁廣鳴) 《帰り道で》 1989年 ビデオ、カラー、サウンド 13分29秒

また、4月24日(水)の18時30分~20時には、「啓視録」展の企画者で、国立台北芸術大学教授であるスン・ソンロン氏が、企画内容や現存しない作品の再制作など、展覧会開催に至るまでのエピソードについて、森美術館の近藤健一氏とキュレータートークを行う。申込期間は 4月22日(月)までとなる。

遡ること39数年前、当時において最新技術だったビデオで美術作品を製作した台湾のパイオニアたちの息吹を森美術館で体感しよう。

「MAMリサーチ010」「MAMスクリーン019」展
会期:4月24日(水)~ 9月1日(日)
会場:森美術館
所在地:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階

(高野晃彰)