光学迷彩という技術は、もはや映画や漫画、ゲームではおなじみの技術ですが、現実世界でもこの技術を実現させる試みが続けられています。
その一つが透明シールド「Invisibility Shield」と呼ばれる製品で、この立板のようなシールドは背景と同化し背後に入った人間の姿を消してしまいます。
そして、ロンドンを拠点とする企業「Invisibility Shield Co」は、この透明シールドを前作から数年の時を経てバージョンアップさせた「Invisibility Shield 2.0」を発表しました。
このバージョンでは、今までよりも巨大なシールドをより自然に背景と馴染ませることに成功しており、また持ち運びが非常に簡単になったといいます。
人や物を透明化する「Invisibility Shield 2.0」
数年前に初めて登場した透明シールド「Invisibility Shield」は、大きな話題を集めました。
一見すると、すりガラスのように若干ぼやけただけの透明な板です。
しかし、Invisibility Shieldの背後に人がまわると、景色をそのまま映しながら、人間だけが消えてしまいます。
私たちが何度も空想してきた透明マントのようなアイテムを、実現させることに成功したのです。
人や物を透明化する「ステルスシールド」を開発!
では、どうしてシールドの背後に隠れた人間だけが透明になるのでしょうか。
これを実現させているのは、光を屈折させる特殊なレンズです。
Invisibility Shieldでは、角度や位置が計算された特殊なレンズが複数配置されており、光は下図のような経路をたどります。
シールドの後ろに立っている被写体(人間や物)を反射して進む光は、シールドを通過する際に屈折・拡散し、観測者になるべく届かないようになっているのです。
一方、背景から届く膨大な光は、観測者の目に届きます。
結果として観測者は、被写体から届くほんのわずかな光と、背景から届く膨大な光が合成された映像(被写体は見えず、背景がややぼんやりしている映像)を見ることになります。
ちなみに、上記の仕組みとレンズの配列方向の特性により、海や空、壁、駐車場、ガードレールなど、水平方向に同じパターンを持つ背景での利用が効果的です。
そして今回新しく登場した「Invisibility Shield 2.0」は、いくつかの点で過去作を凌駕しています。
まずシールドの材料を接着剤で接合する代わりに、単一の材料だけで1枚のシールドを作りました。
これにより、気泡や接合部の違和感が無くなり、より鮮明な透明シールドへとグレードアップしました。
そして過去作はスモールサイズ(31×21cm)と、フルサイズ(95×65cm)の2パターンだけでしたが、Invisibility Shield 2.0では3パターン用意されています。
それぞれ、ミニサイズ(30.5×20cm)、フルサイズ(99×69cm)、メガサイズ(183×122cm)です。
新しく追加されたメガサイズでは、並んだ複数人を立ったまますっぽりと隠すことができますね。
また新しいバージョンでは、自立状態での安定性が増し、装着されたハンドルによって保持と移動が容易になりました。
さらに、Invisibility Shield 2.0から組み立て式になっており、フルサイズとメガサイズは分解して専用ケースに収納できます。
ケースは肩に担いで簡単に持ち運びできるため、どんな場所でもすぐに透明人間になれます。
Invisibility Shield 2.0が使用されている映像を見ると、一度はその効果を試してみたいと思えますね。
ただInvisibility Shield 2.0は隠れた人が、シールドの裏側から周囲の状況をはっきりと見ることができないため、その必要が生じた時には、シールドから顔を出さなければいけません。
また先程も述べた通り、背景が水平方向に繋がっていないとあまり上手く機能しません。
そのため現状このアイテムは、限定的な場面でしか活躍できませんが、それでも背後にあるものを遠目にはきれいに隠せるという点でかなり驚きの迷彩技術です。
Invisibility Shield 2.0は現在、クラウドファンディングサービス「Kickstarter」にて支援募集中であり、ミニサイズ(54ポンド:約1万円)、フルサイズ(299ポンド:約5万7000円)、メガサイズ(699ポンド:約13万3000円)の支援でそれぞれ入手可能です。
気になる人はチェックしてみるのもありでしょう。
参考文献
INVISIBILITY SHIELD 2.0
Personal ‘invisibility shield’ goes on sale, starting under $70
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。