3.鉄道分野における日印補完関係
これらの事例より、インドは鉄道建設だけではなく、日本式の運行管理や人材育成の導入に積極的であることが伺える。インドが求めているのは、ハードとしての鉄道ではなく、社会システムとしての鉄道であり、日本の鉄道が有する付加価値がインドのニーズと合致していると推察する。
図1に鉄道分野における日印補完関係を示す。
前述の通り、鉄道建設プロジェクトは長期間のパッケージ型契約である。
導入初期に日本の技術やノウハウ、日本式のトレーニング施設をインドやインド人管理者に継承する。その後はインド国内において、日本から直接学びを得たインド人管理者がインド人技術者を育成する。
そして、将来における日印補完関係を考えてみる。
日本の鉄道現場は人手不足が深刻化し、自動運転やAI等の活用による効率化・省力化に積極的である。一方、人口ボーナス期を迎えたインドは、国内の産業成長が追い付かず、増加する人口に十分な雇用の場を提供できない状態である。したがって、人手不足の日本と働き口不足のインドの補完関係が成立し、インド国内で育成されたインド人運転士やインド人技術者が日本の鉄道現場で働く日がやってくるのではないだろうか。
4.まとめODAを始めとする鉄道分野におけるこれまでの日印関係では、日本の技術・ノウハウをインドに提供する形であった。しかし、今後は技術やノウハウの補完ではなく、人材で補完する形になることが考えられる。
2024年3月29日に特定技能の外国人労働者の受け入れ枠の上限数や分野の追加について閣議決定した。新たに「自動車運送業」、「鉄道」、「林業」、「木材産業」の4分野が追加され、人手不足が深刻な産業で外国人労働者の受け入れが加速することが想定され、図-1の日印補完関係が現実味を帯びている。
定時運行や安全性の高さは日本の鉄道が世界に誇れる特徴であり、他国が日本との連携で求めていた点であった。日本の鉄道を日本人だけでは維持できない時代になってしまうのは少々残念に思う次第である。
【参考文献】
注1)総務省統計局:世界の統計2024 注2)田中角栄:日本列島改造論,日刊工業新聞社,1972.6. 注3)JICAインド事務所:対インド協力の現状,(参照日2024-03-23) 注4)デリーメトロHP(参照日2024-03-19) 注5)東京メトロHP(参照日2024-03-19) 注6)日本コンサルタンツ株式会社:インド高速鉄道公社 Key O&M Leaders研修,(参照日2024-03-19) 注7)日本コンサルタンツ株式会社:インド鉄道省・高速鉄道公社職員研修,(参照日2024-03-19) 注8)日本コンサルタンツ株式会社:インド国ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道プロジェクトにおける研修施設整備,(参照日2024-03-19)
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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