相貌変形視は赤い光で悪化して緑の光で正常化する
今回の研究の中心となったシャラ氏について、症状を改善するヒントが見つかったとCNNが報じています。
シャラ氏の場合、実際の人間の顔を見たときのみ歪みが発生し、二次元的な媒体では普通にみることができます。
そこでシャラ氏の支援者であるキャサリン・モリス氏はある日、光の波長が相貌変形視の発生に関与しているのではないかと疑いました。
モリス氏は長年視覚障害者の学校で働いてきており、視覚障害者たちが感じる光によって、彼らの症状が微妙に変化することを知っていたからです。
モリス氏はさまざまな光の条件で、シャラ氏の症状を確認しました。
すると赤い光を使うとシャラ氏の相貌変形視の症状が激しくなり、逆に緑色の光では歪みが消滅することが明らかになりました。
緑の光のなかで症状が消え去ったことを知ると、シャラ氏は(感動のあまり)赤ん坊のように泣き叫びました。
その後モリス氏は実験結果を活用するために、シャラ氏に視界が緑色になる色付きメガネを送りました。
シャラ氏はそのメガネを使って孫たちと初めて対面すると、孫たちの顔には歪みがなく、普通に見えたと述べています。
シャラ氏は現在、研究者たちと一緒に、相貌変形視を矯正するメガネの開発を行っており、緑色のメガネがシャラ氏だけではなく、他の相貌変形視の患者にも同様の効果があることがわかりました。
なぜ赤色が悪化させ、緑色が治すかを理解できれば、相貌変形視の治療薬開発に大きな一歩となるでしょう。
参考文献
If Faces Appear Distorted, You Could Have This Condition
元論文
Visualising facial distortions in prosopometamorphopsia
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。