笑顔は他の表情よりも魅力的で、若い印象を周りに与えます。
このような考えを読者の皆さんも持っているのではないでしょうか。
しかしイスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学(Ben-Gurion University of the Negev)のツヴィ・ガネル氏(Tzvi Ganel)らの研究では、この笑顔に関する信念が間違っていることを報告しています。
実験では参加者に笑顔や驚いた顔を見せ、その顔の年齢を推定してもらいました。
実験の結果、無表情の顔と比較して笑顔は約1歳老けて、驚いた顔は約1歳若く評価されたのです。
しかしどの表情が一番若かったと思うか思い出してくださいと問うと、見ながらの評価とは異なり、笑顔が最も若かったと回答しました。
研究チームは「多くの人が持っている『笑顔は若く見える』という信念は、実際に見た場合には異なる可能性を示した」と述べています。
研究の詳細は、学術誌「Psychonomic Bulletin & Review」にて2018年の4月25日に掲載されました。
最高の表情は「笑顔」なのか
悲しみや怒り、驚き、嫌悪、恥じらい。
相手に最も良い印象を与えるのは、どの表情でしょうか。
おそらく多くの人が「笑顔」と答えるのではないかと思います。
このように私たちは、笑顔から若さや健康、魅力などのプラスの価値観を連想し、笑顔こそが最も良い表情だと考える傾向があります。
たしかに笑顔にはさまざまなメリットがあります。
たとえば、笑うことによる健康効果を調べた調査では、よく笑う人ほど長生きする傾向があり、笑うことが健康に対してポジティブな効果をもたらすことを報告しています。
しかし人間関係において笑顔は本当に良い印象を与えない可能性も考えられます。
実際にこの疑問を調べた研究があります。
それは英ポーツマス大のエドワード・モリソン氏(Edward Morrison)らの研究で、表情で個人の魅力度が変化するのかを調べています。
実験に参加したのは大学生128名でした。
参加者は、男性14名と女性16名の7種類の表情のなかからランダムに1枚だけを観察し、魅力度を評価しています。
表情の種類は、嫌悪、怒り、恐れ、驚き、悲しみ、無表情そして幸福(笑顔)がありました。
実験の結果、怒りや恐れなどネガティブな表情は魅力が低く、幸福(笑顔)のポジティブな表情は魅力度が高い傾向があるように見えますが、どの表情であっても魅力度は一定していることが分かりました。
つまり笑顔であろうが怒っていようが、顔が良い人は魅力度が高く、顔が悪い人は魅力度が低く評価されたのです。
研究チームは「生まれ持った顔を変えるのは難しい。そのゆえ私たちは、どんな表情を相手がしていようが、その人の魅力度を安定して評価できる」と述べています。
しかしどうして私たちは笑顔が魅力や若さなどのプラスの価値観と結びついているのでしょうか。