猿夢(さるゆめ)は、2000年8月2日「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」通称「洒落怖」の初代スレッドに書き込まれた怪異の一つだ。感染する怪異であるとも言われており、その非常にグロテスクな内容から、非常に知られているネット発の都市伝説ともなっている。
内容は、投稿主が夢の中で奇妙な無人駅に立っており、そこに到着した「お猿さん電車」のような乗り物に乗り込むところから始まる。車両にはそれぞれ見知らぬ人たちが数人乗車しており、投稿主は後ろから3番目の席に座り、明晰夢であったこともあり怖くなったら目を覚ませばよいと考えていた。
すると突然、「次は活け造り~活け造り~」という不気味なアナウンスが流れ、車両の一番後ろに座っていた人間が4人の小人らしき存在によって刃物で切り裂かれ内臓が取り出される。そして、「次はえぐり出し~えぐり出し~」というアナウンスによって、次は2人の小人が投稿主の近くに座っていた人物に迫り、スプーンを使って目玉をえぐり出す光景を目にする。そして、「次は挽肉~挽肉です~」というアナウンスによって、投稿主の膝の上に奇妙な機械を持った小人が現れ、ついに目を覚ましたという。
だが、夢のことを忘れていた4年後に再びこの夢を見ることとなり、同じような展開がなされる中で、再度目をを覚ますことができた。しかし、その際目を覚ましたにも関わらず「また逃げるんですか~?次に来たときは最後ですよ~」という声が聞こえ、次に同じ夢を見た時には自身の命はもう無いと確信し、このストーリーは結ばれた。
この話は、当初「猿夢」という名で語られたものではなかったが、のちの2001年になって「猿夢電車」という名称が登場し、そこから猿夢というタイトルが定着したようである。ストーリー自体は、洒落怖以前から存在しているものであり、1999年にwebサイト「かわいい星怪談会議室『怖いのきらい』」にある掲示板での話に再編集を加えたものが猿夢であると言われている。
猿夢はその後、この話を読んだことによって同じような体験をしたという話も語られるようになり、「猿夢+」「猿夢エゴマ」といった派生も確認されている。殺害方法がより豊富になっていると同時に、この怪異が感染タイプのものであるとの認識も高まることとなった。
また、このストーリーには類似したものがあり、常光徹『学校の怪談B』には、夢の中で線路の上を歩いている男が「線路を歩いてはいけません」という看板を見つけるもそのまま歩き続け、突然前方から電車が迫り、大きく手を振って叫んだことで電車が手前で止まり、そこで目を覚めた。
一年後、男はその夢の続きを見ることとなり、引き返そうと背を向けた途端に電車が動き始め、背後に電車の音が迫ったその瞬間に目を覚ました。安心して一息ついた男性であるが、そのとき耳元で「つぎの夢で最後ですよ」という声が聞こえてきたという。
このように、猿夢の元になったのではないかと思われる話はいくつか確認されており、その一つとして、さらに映画『エルム街の悪夢』をあげる人もいる。この作品は、大きな鉤爪を持った殺人鬼フレディが、人々の悪夢の中に現れ次々と殺害を繰り返すという内容であり、シリーズ化されるなど、「13日の金曜日」と並ぶ人気ホラーとして有名な作品である。
夢の中で殺人が行なわれ、さらにそれが現実へ干渉してくるという点も猿夢と共通している。中には、「猿夢」という名称は「さるゆめ」ではなく「えんむ」、すなわち「エルム」から転じさせた言葉が元となったのではないかという解釈もある。きわめて猟奇的なその内容は、洒落怖の中でも異質な個性を放ったものとして現在も語り継がれている。
【参考記事・文献】
朝里樹『日本現代怪異事典』
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文=ZENMAI(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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提供元・TOCANA
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