街中で何かを手軽に食べようと思った時、牛丼やハンバーガー、とんかつ、フライドチキンなどは定番的な人気メニューだが、こうした“肉食”に対するプレッシャーは今後徐々に強まってくるのかもしれない。最新の研究で精肉商品に否定的でショッキングな写真とメッセージを記したラベルを添付すると、実際に消費を抑制できることが報告されている。
ショッキングな写真とメッセージで肉の消費を抑制できる
海外で売られているタバコのパッケージにはニコチンに侵された肺や歯周病の口内などのショッキングでグロテスクな写真が表示されていたりするが、同じ手法が今後は精肉商品にも使われることになるのかもしれない。新たに発表された研究ではタバコの箱と同様の消費抑制戦略が精肉商品にも効果があることが報告されている。
ドイツのブランド応用科学大学とオランダのデルフト工科大学の合同研究チームが2023年2月に「Food Quality and Preference」で発表した研究では、肉食を侮辱するメッセージを製品に添付するという対立的なアプローチが消費者の行動に影響を与える可能性があるかどうかが実験を通じて検証されている。
161人のボランティアが参加した実験では、スーパーなどに並んでいる鶏むね肉のパックが2つ用意されて参加者に見せられたのだが、そのうちの1つにはショッキングな警告ステッカーが貼られていた。
この警告ステッカーには、飼育ケージの劣悪な環境の中にすし詰めにされているニワトリの可哀相な写真に「肉を食べると動物が苦しむ」というメッセージが添えられていたのだ。
この警告ステッカーが貼られたパックを見た参加者は次に製品を購入する可能性、感情的な反応、将来の購買習慣に影響を与えるかどうか、肉を食べる頻度について回答した。
収集した回答データを分析した結果、ショッキングな警告ステッカーが消費者に鶏むね肉の購入意欲を低下させ、将来的に肉を食べる量を減らす動機さえ与えたことが明らかになった。
483人のボランティアが参加した実験では、参加者は同じく肉食を嫌悪するステッカーが貼られた肉のパックを見せられたのだが、今度は可哀相な動物を力説したものに加えて、肉食が環境破壊を引き起こすことを力説したものと、肉食の健康被害を力説したものが加えられた。
こうした警告メッセージを見た参加者は最初の研究と同様の回答を行い研究チームによって分析されたのだが、メッセージの違いによる反応の差異はないことが浮き彫りになった。つまりショッキングなインパクトが重要であり、具体的なメッセージ内容は二の次ということになる。
肉好きの肩身が狭くなる未来は確定か!?
563人が参加した実験でもさまざまな警告ステッカーが貼られた精肉のパックが見せられたのだが、そのメッセージの発信者が国連、グリーンピース(国際環境NGO)、または民間病院の栄養士の3パターンあることが説明された。
その後、参加者は同様の回答を行い集められたデータが分析されたのだが、メッセージの有効性には発信者による差異はなかった。しかしある意味では当然だが、その発信者への信頼の高さがメッセージの信頼度を高めていたことも明らかになった。つまりあまり有名ではない栄養士が言っていることであったとしても、個人的にその栄養士への信頼度が高ければそのメッセージの影響力は強まるのである。
ということは信用できる組織や個人のアイコンが表示してあるだけでも、支持者にとってはそのメッセージや警告は有効に作用することになるのだ。
この3つの実験によって研究チームは肉を食べることの動物福祉と環境への悪影響についての感情的な警告メッセージは、それがどのように作られたか、誰が発信しているかに関係なく、消費者が精肉商品を購入するのを思いとどまらせることができると結論づけている。つまりタバコのパッケージにあるようなショッキングな警告メッセージは、食肉のパッケージにも有効であるというのである。
少なくとも今の日本で暮らしている限り、肉を好んで食べていてもあまり非難されることはないとは思うが、世界的な食糧危機が着々と進む中にあって、今後はタバコと同じように肉食もまた徐々にネガティブなイメージを植え付けられ、消費を抑制する圧力が高まってこないとも限らない。今回の研究はもうその準備段階に入っていることを暗に示すものであるのかもしれない。肉好きの肩身が狭くなるという懸念は杞憂であってもらいたいものだが……。
参考:「Daily Mail」ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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