異業種への参入で本業のダメージを軽減

本業が斜陽産業となってしまった企業に求められるのは、AOKIのように多角化経営に本腰を入れていく視点なのだろうか。

「おっしゃるとおりです。スーツの需要は着実に減り続けており、紳士服業界は、カジュアルシフト、レディース取り込みに必死です。また今、多くの紳士服専門ブランドは量産スーツではなく、オーダーメイドスーツで利益を上げる方向に舵を切っています。これは、昨今のユーザーの嗜好を捉えたものではあるので、一定の需要は見込めるでしょうが、そもそもスーツを着るカルチャーが薄れつつあるので根本的な解決には結びつきづらい。だからこそ『乗っている船の補修』だけではなく、同時進行で『新たな船を造る』という経営が求められるわけで、AOKIはまさにそれで結果を出したわけです」(同)

最後に、AOKIの今後の戦略予想を聞いた。

「コート・ダジュールというブランドを確立したカラオケビジネスを、変化させていくのではないでしょうか。というのも、AOKIのカラオケビジネスは、コロナ禍の影響で1年ほど前までかなり客足が落ち込んでいたものの、さすがAOKIと言うべきか、実は客足が落ち込み始めた段階で、そのスペースを別目的で提供するビジネスの布石をすでに打っていました。それはオフィス環境を共有できるコワーキングスペースビジネスです。

近年、リモートワークの流行で、人に邪魔されることなく仕事ができるスペースを確保する難しさが叫ばれおり、コワーキングスペースの需要が高まっています。現在AOKIはこうしたコワーキングスペースを都心部で展開していますが、今後はそこで得たノウハウを生かして、郊外のロードサイドで紳士服店やカラオケ店を業態転換して、大規模なコワーキングスペースに改修するといった一手を打ってくるかもしれませんね」(同)

紳士服業界での成功に必死にしがみつくのではなく、時代の流れを読んで異業種にチャレンジしていくAOKIの経営センスには驚かされるばかり。縮小し続ける紳士服業界に依存しない同社が今後どんな躍進を遂げるのか、今後も目が離せない。

(文=A4studio、協力=中井彰人/流通アナリスト)

提供元・Business Journal

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