日本のホラー漫画の第一人者、あるいは恐怖漫画の神様とも称される楳図かずお。『おろち』や『神の左手悪魔の右手』そして『漂流教室』など、見た目の描写に留まらない人間の言動や心理からくる恐怖を巧みに描いたことで知られ、また『まことちゃん』に代表されるホラーとはかけ離れたオゲレツとも言えるギャグ漫画でも一世を風靡した。
ホラー漫画家として圧倒的な好評を得ていた楳図かずおが、なぜホラー漫画から「まことちゃん」のようなギャグ漫画路線に移行するようになったのか。これには、ある一つの都市伝説が囁かれている。
1970年代、夜遅くまで漫画の執筆をしていた彼の家に、一人の女性が訪ねてきた。彼が玄関で応対をすると、その女性はどうやら熱烈なファンであったということなのだが、頭からすっぽりと風呂敷をかぶった妙な格好をしていたという。
するとその女性は、彼に対し「あなたはどこで私を見たんですか」「なぜ私のことを漫画に描いているのですか」と尋ねてきたのだという。楳図が恐怖を感じたその時、女性がかぶっていた風呂敷がふっと取れ、なんと2本の手首が頭からニュっと出ている女性の頭部が露になったのである。
このような体験があったため、彼はホラー漫画を描くことを辞めてギャグ漫画を描くようになった。これが都市伝説として語られる、ギャグ漫画すなわち「まことちゃん」を執筆するようになった理由と称される話だ。
この話が本当かどうかについては定かではない。だが、少々気になる点があるのも事実だ。この話によれば、彼は突如として「まことちゃん」というギャグ漫画を執筆したように思えるが、実はそういうわけではない。
そもそも「まことちゃん」自体が、まことの祖父である沢田元太郎が主人公の『アゲイン』という作品のスピンオフ作品としてスタートしたものだ。「アゲイン」は、1970年から72年にかけて週刊少年サンデーにて連載されていた作品であり、これ自体がすでにギャグ漫画であった。また、「まことちゃん」が連載を開始した1976年以降の80年代にもホラー漫画を執筆しているため、安易にホラー漫画から離れたということはどうにも考えにくい。
さらに言えば、実はこれに酷似したストーリーが彼の作品の中で描かれているのだ。1967年から翌68年、そして1976年にも連載された『猫目小僧』。人間のような風貌のために捨てられた猫又の子「猫目小僧」が、行く先々で妖怪による事件に巻き込まれていくというこの作品の中に、「小人の呪い」と題した回がある(復刻では「妖怪百人会」と改められている)。醜い姿で生まれたことで化物扱いされてきた人々が、その復讐として他の人間たちを醜い姿に整形させるというきわめてグロテスクなこの作中に次のような展開が描写されている。
ある売れっ子の妖怪漫画家が、自分の漫画に「頭から手が生えた男」を描いていた。そこに、大布を頭にかぶった女性が訪ねて、「先生はわたしのことをどこでごらんになったのですか」と問う。「お前など見たことも聞いたこともない」と追い返そうとする漫画家であったが、「これでも見たことがないというのですか?」と布を取り払った彼女の頭には、なんと自分が漫画に描いたのと同じ2本の腕が生えていたのだ。
このストーリーは、まさしく楳図かずおの先の都市伝説とほぼそのままであると言って良いだろう。作中の体験者が同じく漫画家であったということから、いつの間にか楳図かずお自身の体験として語られるようになったということなのかもしれない。
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文=ZENMAI(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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提供元・TOCANA
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