アメリカのフロリダ州にある細長い列島「フロリダキーズ」の沖合にて、魚たちが「死ぬまでぐるぐると回り続ける病気」が広がっています。
2024年5月8日の時点で、そのようにして死んだ魚が海岸に打ち上げられているという報告は、500件近くに達しました。
現在、フロリダ・ガルフ・コースト大学(FGCU)や魚や生態系の保護に携わる非営利団体「Bonefish & Tarpon Trust(BTT)」など、様々な機関や団体が協力して、原因究明に努めています
フロリダ沖で魚がぐるぐると回る病気が蔓延!原因は藻類か!?
フロリダキーズの沖合で、「魚たちが死ぬまでぐるぐると回り続けている」と、最初に報告されたのは、2023年10月のことでした。
なんと様々な魚が平衡感覚を失い、円を描くようにぐるぐると泳ぎ続けるというのです。
それら狂った魚たちは、最終的に死亡し、それらの死体がフロリダキーズの海岸に打ち上げられます。
この異常行動と死亡の原因を特定するため、2024年1月11日、フロリダ・ガルフ・コースト大学(FGCU)や魚や生態系の保護に携わる非営利団体「Bonefish & Tarpon Trust(BTT)」など様々な機関や団体が協力し、調査を開始しました。
そして2024年5月8日の時点で、「死んだ魚が打ち上げられた」という報告は500件近くに達しました。
しかも50種を超える魚たちで、この異常行動が観察されており、例えばソトイワシ(学名:Albulidae)やノコギリエイの一種で絶滅の危機に瀕している「スモールトゥース・ソーフィッシュ(Smalltooth sawfish)」などが含まれています。
現段階では原因を完全に解明できていませんが、それでもいくつか判明したことがあります。
まず、サンプルを採取した魚において、ウイルスや寄生虫、臓器の異常などは見られませんでした。
また、海水のサンプルを分析したところ、一般的な赤潮でもないことが分かりました。
一方で、海水と魚たちの組織の両方に、天然の藻類毒素が存在していることが明らかになっています。
ガンビエールディスカス属(Gambierdiscus)の藻類が、通常の4倍というこれまでに記録されたことのないレベルで検出されているようです。
この藻類の持つ毒素を魚が蓄積した場合、人間がその魚を食べるとシガラテという食中毒を起こすことが知られています。
専門家たちによると、これらの毒素によって魚たちが神経に問題を抱え、異常行動を起こしたり死んだりしている可能性があるようです。
こうした影響が、スモールトゥース・ソーフィッシュなどの絶滅に瀕した種にも及んでいることを考えると、早急な原因究明と解決が必要だと分かります。
ちなみに、回り続ける魚を海水から取り出し、別の水槽に移し替えたところ、一部の魚は25分ほどで回復したという報告も上がっています。
もしかしたら早急なレスキューによっていくらか保護できる命があるのかもしれません。
専門家たちは、完全な解明を目指して、魚たちの異常行動に関する研究と分析を続けています。
参考文献
Spinning Fish in the Florida Keys
Florida Keys Abnormal Fish Behavior Event Fall 2023 – Present
Scientists reveal why hundreds of fish in Florida Keys are spinning to death and washing up on popular beaches
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部