ホンダのミニバンの最上位となるのが「オデッセイ」です。2023年12月の再販売から、パワートレインはハイブリッドだけとなりました。その走りは、どのようなものなのでしょうか。実際に「e:HEV ABSOLUTE・EX」に試乗したので、その印象をレポートします。文・鈴木 ケンイチ/写真・PBKK

背が低いので、ミニバンというよりもSUVに近い視界
全体

もともと「オデッセイ」は、3列シートのMPV(多人数乗車モデル)なのに、背が低いというのが売りで人気を集めていました。その理由は、スライドドアではなく、5ドアのセダンをベースにMPV化していたからです。そのため先代モデルの全高は、わずか1545㎜しかありませんでした。立体駐車場にも入れることができる、背の低さだったのです。

ドア

ところが2013年に誕生した現行モデルでは、5ドアをやめて、左右スライドドアを採用。全高も一気に150㎜ほども高めました。一般的なミニバン的な構成となったのです。とはいえ、それでも全高は1695㎜。Lクラスのミニバンであれば、1800㎜や1900㎜台が標準的になります。それよりも「オデッセイ」は、十分に背が低いのです。
そのため運転席に座ったときの目線の位置は、ミニバンというよりもSUVやクロスオーバー的なものとなります。この座ったときの、視界は「オデッセイ」ならではのものと言えるでしょう。

ハンドリングも低重心で、不安がなくてSUVぽい
ハンドル

走らせてみても「オデッセイ」は、ミニバンというよりもSUVやクロスオーバーのようなフィーリングです。重心が低いためか、コーナーリングでの不安定さがありません。動きにしっかり感があります。路面の凹凸を超えるときの不快なショックは小さく、乗り心地は良いのですけれど、フワフワしておらず、シャキッとしています。この安心感は、歴代の背の低い「オデッセイ」に通じるものがあると言えるでしょう。

パワートレインはハイブリッドのみ
エンジンルーム

2013年のデビュー時には、2.4リッターのエンジン車であった「オデッセイ」。ところが、2016年に2リッターのエンジンを使うハイブリッドが追加されました。そして、2023年の再販売からは、パワートレインはハイブリッドのみとなります。駆動方式はFFのみです。

ハイブリッドのシステムは「e:HEV」と呼ばれるもの。2リッターのエンジンと、駆動用と発電用の2つのモーターを搭載します。ユニークなのは、走行のほとんどを駆動用モーターで走ることです。そのとき、エンジンは発電機の役割を果たします。ただし、高速道路などの一部の領域で、クラッチをつないでエンジンの力で走行します。ほとんどの領域が、いわゆるシリーズ方式のハイブリッドで走行し、一部だけでパラレル方式を使います。

スムーズだけど、パワーモードでエンジン音が大きくなる
運転中

走行領域のほとんどがモーター駆動というのが「オデッセイ」に搭載される「e:HEV」というハイブリッドの特徴です。駆動はモーターで、エンジンは発電を担います。ですから、加速感はギヤがないので非常にスムーズ。人をたくさん乗せるミニバンとしては、ギクシャクしないスムーズな加速は何よりも嬉しい特性です。

ボタン

しかし、それだけでないのがホンダらしい部分でしょう。ドライブモードのスイッチがあって、「スポーツ」というモードを選ぶことができます。そのボタンを押すと、エンジンが常時稼働するようになり、突発的な急加速に備えます。また、その状態で深くアクセルを踏み込むと、ヒューンというエンジン音の高まりとともに猛然とダッシュしてくれるのです。まるでスポーツカーのようなエンジン音が、ドライバーの心をウキウキと湧き立たせてくれるのです

低重心で安定したハンドリングと、わくわくするパワートレイン。意外と運転の楽しいクルマであると感じました。

室内は、全高が低いけれど、狭苦しくない。2列目シートは嬉しい
ゆったり

スライドドアを開けて、車内に乗り込めば、そこは、いかにもミニバン的な空間です。全高がライバルよりも低いとは言いますが、まったく狭いとは感じませんでした。十分な広さです。また、2列目シートはオットマン付きで非常にゴージャス。装備類も充実しているので、乗員として快適なドライブが過ごせることでしょう。

最後

2023年12月から再販売された「オデッセイ」。その室内空間には、ミニバンならではの広さと快適性がありました。その一方、モーター駆動中心の走りは、とてもスムーズ。それでいて運転の愉しさもあります。優れたユーティリティと、楽しいドライビングが融和するミニバンと言えるでしょう。